お寺
虻にハエの全盛期も終わりに近づき、もっぱら蜻蛉の季節です。 いよいよお寺の基礎工事が始まりました。溝を掘って、砕石が入り、図面が形になってきております。一人の若者は大工さんに弟子入りして直に携わり、労働を差し出す若者たちは、境内端の土留めの為にパイプを打ち込んだり、バックフォーで整地したり、一つ一つ自分たちの手で行われています。私もお昼ご飯を作ったりしながら、実際に土まみれになっていなくても、自分が作っているのとまったく同じでお得です。 先日一人の若者が決意しました。「とりあえず僕も、お寺が建つまでは積極的に参加して、来年、出来てから次のこと(社会で働くか、お坊さんになるか)決めます。」「自分が決めたことをどのくらい守れるか、挑戦です。」 人が苦手な彼は、早速そのためにみんなの団欒の時間にすぐに部屋に帰らないでお話しするように決めました。「本当は飲みたいわけじゃないけど、5分だけコーヒー飲みます。」と宣言してそこに居た彼の姿がありました。 決意に挑戦といって、飲みたくないコーヒーを飲むのは何か違うような気がしますが、とりあえず様子を伺います。誰だって、諦めたらおしまいですから。 先日までハエ大臣に任命されていたM君もあまりに何もしないのでみんなのストレスが集まってきておりました。そんな矢先、今度はお粥つくりに変更なりました。 とにかく朝の神聖な時間を任されたわけです。時に1か月もお風呂に入らないM君は、まず4時半に起きて洗顔、歯磨き掃除から始まります。自身の清潔さから、1分でも遅れないで食事が始まるように、要求されるハードルがだんだん高くなってきました。 薬味のお皿が斜めになっていたらもう駄目です。お粥が煮すぎて糊になってしまったり、お味噌汁が水っぽかったり、なかなか合格にいきません。とにかく和尚様は彼を見つめながら指導しています。もう何回お椀が飛んだことでしょう。「こんなのが食えるか。」とあたりにお粥とお味噌汁が飛び散り、残ったものだけで黙々と食べ続けます。Mくんはまずバケツを持ってきて散乱したお粥の片づけから、朝が始まります。頑張れ、M君。でも、決して出来ない要求ではないのです。みんなはじっと見守っています。 ここはまったく大人の道場です。 和尚さんの最初からの念願だった、お坊さんを育てる場所、それが今、ハード面もソフト面も充実してきています。