職の精神史

2008/05/09(金)00:13

228.答えがおかしいと思った時は・・・

内定への一言(就職/就活)(71)

※この文章は、2003~2006年に大学生・若手社会人向けに配信されたメルマガ『内定への一言』のバックナンバーです。 228.「答えがおかしいと思った時は、たいてい質問が間違っている」(アインシュタイン) さて、午前中に配信した「新聞の読み方」に続き、今夜は「情報の属性」について扱ってみます。これを知るのと知らないのでは、「面接、全っ然違いますねっ!」という声がよく寄せられるからです。 読者の皆さんは、情報に「属性」があるということを、考えてみたことはありますか?属性とは、ある基準によって明確に分けられる性質や特徴のことです。 今日は… 1.CD/HD 2.CE/OE という、代表的な2つの属性について説明します。 まず、1は「クールデータ(CD)」と「ホットデータ(HD)」の意味です。何をもって区別するかというと、それは、「事実と意見のどちらか」。 例えば、あなたは出身地が福岡で、性別は女性で、血液型は「O型」だとしましょう。 この場合、あなたに関するHDは…「福岡出身」、「女性」、「O型」の3つの情報です。 HDの特徴は、「変更できない、単語で答えられる、確認するための情報」という点で、その人や物の概要を把握するための「事実」を説明するための情報です。 しかし、HDとなると違います。HDは「ホット」であるだけに、「福岡が好きだ」、「女性でよかった」、「O型でのんびりしすぎかな」などと、「感情や時間によって変動し、文章で答え、共感するための情報」という目的で使用される情報です。 例えば、僕が皆さんに「血液型は何型ですか?」と聞いたとしましょう。ある人が「A型です」と答えたとしても、僕は…「え…A型…僕と同じだぁ~~~っ!感動しまくった!」とは、なりません。だって、CDは「確認するための情報」なのですから。理性をもって処理する情報に感動が伴うはずもなく、「あっ、そう」という確認によって、この問いは目的を果たします。 しかし、「福岡出身であることを、どう思いますか?」と聞いたとして、ある人が「太古から遣隋使や遣唐使の拠点となり、豊かな歴史と文化を持つ都市に生まれることができて、私は感謝と誇りでいっぱいです」と答えたら…「うぅっ…君は素晴らしいね」と、僕は感動します。 なぜなら、この答えはHDだからです。HDは「共感するための情報」で、感情によって処理するもの。よって、疑問や感動、反発、好奇心など、様々な感情の動きが生まれます。 CDは主に、行政関係の書類(免許証、戸籍謄本、住民票)や、履歴書などに用いられます。あなたは免許証を持っていますか?その免許証には、取得年月日や期限、運転の条件、住所などが書かれていることでしょう。もし、「この人は仮免に5回も落ちた、ダメドライバーです。縦列駐車がホントに下手でした」とか書いてあったら、それはたまりませんよね。また、戸籍謄本には、いつ、どこで、誰の何番目の子供として出生し、家族はどう居住地を変えてきたか、が書かれています。もし、「いやぁ、不幸な星の下に生まれて、本当にかわいそうです」とか書いてあったら、これは大変な問題でしょう。 このような書類は客観性や事実関係が大事で、感情による判断は不要です。だから、感動などしないし、「分かれば、それでいい」というだけの情報が掲載されています。 …ということは、就活では、どちらの情報を多く取った方がよいのでしょうか?CDも大事だけど、HDを聞かなければ、志望しようにも動機が得られず、冷めた、というより「白けた面接」をしてしまいかねません。 実は、HDとCDは、「問い方」によって、自由に選ぶことができるのです。それが、「CE(Closed End)」と、「OE(Open End)」の2つの質問方法です。「CE」とは、諾否か単語で答えられる質問のことを言います。例えば… ・今、何歳ですか? ・あなたは学生ですか? ・一蘭と一風堂、どっちに行く? ・部屋、寒い? などで、これらの質問は、それぞれ「はい、いいえ」か、求められる単語を選べば、それで用は済んでしまいます。要するに、話を続けるための質問ではなく、事実の把握や意思確認のための質問と考えてよいでしょう。 一方、「OE」は、文章によって答える質問を指します。さっきの問いを借用すれば… ・20歳になって、どう思いますか? ・学生であることを、どう思いますか? ・一風堂のラーメンを、どう思いますか? ・寒い時って、どうする? という形の問いが、「OE」型の質問。この形式で質問すれば、あなたは前述の「HD」を得ることができ、感情によって受け止めた答えに対し、様々な反応を確認することができるでしょう。 では、就活に当てはめてみましょう。あなたはある合同説明会に行き、面白そうな企業を見つけました。そして… ・御社の資本金はいくらですか?(1億円だよ) ・転勤はありますか?(3年たったらあるかもね) ・女性の社員は多いですか?(3割くらいだね) ・商品は何ですか?(オフィス用の通信機器だよ) という質問を行い、(  )内の答えを入手し… 「なんか、面白い会社なかったね」と言いながら、帰っていきました。 以降、どの説明会に行っても、同じ形式の質問(CE型)を繰り返したあなたは、毎回「あぁ…やっぱり、自分が行きたい会社って、そんなに簡単に見つかるわけないか」と疲れ、4月を迎えて、気分も落ち込み始めました。 …というふうに、毎年毎年、「間違った問いを連発し、自分で自分の邪魔をすることに余念がない」という学生さんを見てかわいそうになるので、「説明会や面接では、OE型の質問をして、HDをいっぱい手に入れましょう」と呼びかけています。情報がないことなんて、絶対にありません。大抵の場合、質問の方が間違っているのです。 あなたがもし、「情報の属性」を知っていて、OE型の質問をすれば… ・資本金1億円を、どう投資していくんですか? (それはね、今後予定している新事業の立ち上げに使って、さらに君たちが活躍できるチャンスを作る予定だよ) ・社員の方は、転勤をどう捉えていますか? (最初は嫌がる人もいるけど、みんな行けば一回り大きくなるし、いずれ故郷で活躍するためには、行ってよかったと言う社員が多いよ) ・女性社員を、どう活用していますか? (女性はお金にシビアだし、商談でも遠慮しないから、積極的に営業現場で活躍してもらって、出産後も役立つスキルが身に付くように配慮してるよ) ・なぜ、通信機器を扱っているんですか? (通信機器は投資額が少なくて済むのに、小さな会社と大きな会社の差を埋める力がある、すごい設備なんだ。大きくなる可能性を持った会社を応援するには最適な商品の一つだから、これを扱ってるんだよ) …という答えが返ってくるでしょう。 説明を聞いたあなたは感動し、「どこに行っても面白い会社ばかりで、受けるたびに第一志望が入れ替わって、どの仕事もしたくなって大変だ」と思うでしょう。まったく、「嬉しい悩み」です。 OE型の質問は、先ほども書いたように、「文章によって答える質問」なのですから。感動して当然なのです。心理プロセスを見ても、そうなるしかありません。答える相手は「思考」が必要で、個性によって情報や知識を組み合わせて答えるため、必然的に「面白い」とか「面白くない」という反応に直結する回答が出来上がります。 相手も気分が乗りやすく、答えて楽しく、聞かれて嬉しい…という質問がOE型の質問で、HDをたくさん得たあなたは、自信を持って書け、相手と共有できる「志望動機」が、書ききれないほど、言い切れないほどたくさん入手できてしまいます。 冬に、「志望動機に、何を書いていいか分からない。もっと情報収集をしないといけない」と悩んでいる学生さんを見ると、僕はいつも、「情報収集なんてしなくていい。それより、問いを変えてみたらいいよ」と助言することにしています。 学生さんの中には、何時間も悩んでも、ちっとも納得する志望動機が書けないばかりに自分を責めて、結局、書きかけて提出せず、自分でチャンスを潰してしまう人もいます。そういうのはもったいないから、面接塾では1月末から、この「問い方」を中心に、話を組み立てる順番や効果的な説明・質問の手法などを教えてきましたが、受けた人は続々と第一志望に内定をもらっているようですね。 情報の属性は、今日書いたものだけではありませんが、属性やもたらす効果を知っておけば、面接官くらい簡単に操ることができます。僕は、事前に「相手が言うであろう答え」を書いて面接を受け、思いのままに相手を操作し、そう感じてほしい答えを相手の心の中に浮かび上がらせることができます。あんまり教えると、受かりすぎて気味が悪くなるので、学生さんには僕が持っている知識やノウハウのうち、半分くらいを教えました。 中でも、今日の「CD/HD」や「CE/OE」は、基本中の基本ですから、ぜひ単独説明会や面接に生かしてみて下さいね。うまくいかない時は…あなたに才能がないのではありません。情報が不足しているのでもありません。ただ、問いがズレているのです。欲しい情報に出会いたかったら、相手がそれを提供せざるをえない問い方にこそ、万全の準備を行いましょう。

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