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カテゴリ:内定への一言(就職/就活)
※この文章は、2003~2006年に大学生・若手社会人向けに配信されたメルマガ『内定への一言』のバックナンバーです。
60.「十の挑戦より、一つの達成」 就活コースも七回を終え、参加者の学生さんと話すのが毎回の楽しみの一つになってきました。 そんな中で毎年聞くのが、「エントリーシートに何を書いていいか分かりません」という声。さらに、「友達は色々やってるけど、私は何もやってない…」と続くこともあります。 そこでいつも言うのが、「行動を投資と投機に分けてみたら?」ということ。学生さんは「トーシとトーキ?」と不思議な顔です。英語で言うところの、investmentとspeculationについて、その差を久しぶりに解説してみましょう。 「投資」とは、今は可能性が潜在的だけど、将来の顕在化を期待して長期的にその開花の過程と付き合う努力を言います。 反対に「投機」とは、相場の上下の振幅に合わせて、有り金をつぎ込む行為ですよね。近年は「資産運用」がブームで、「プチ投資家」気取りの若者やOLが増えてきましたが、これなども実際は、本人たちが気付いていないだけですが「投機家」です。 行動が「投資」と「投機」に分かれるというのは、「結果を出したか」が基準です。地道な努力や目立たない結果でも、所定の目標を達成するのが「投資」で、楽しそうなら始め、きつかったらやめる、というのが「投機」です。 投機は感情に流され、勢いに便乗し、一人では元気になれず、周囲にネガティブ心理を撒き散らし、やがて消えていきます。金融市場で「仕手筋」と言われる人たちも、同様の動きをしていますよね。 学生時代、特に就職活動では、「色々やってる人」、つまり「行動的な人」が華やかに見え、就職でも有利だと思うでしょう。しかし、「色々やったけど、何も形になってない人」は、思いのほか苦戦します。なぜでしょう? それは「信用できない人間だから」です。やろうと思ったことを途中で投げ出す人間、頑張ると決意したことを諦め、途中で他のことに集中を切り替える人間ほど、信用できない人間はいません。 学生さんは「行動力のある人」が有利だと思っていますが、それは違うという例を挙げます。ある人が外国に行き、「やっぱり英語が大事だ!」と英会話の学校に行ったとしましょう。 語学の道は長く険しく、途中には多くの挫折があります。ここで… 投資的行動を取る人⇒「何があっても初心を信じる」 投機的行動を取る人⇒「嫌なことがあったら、何か違うね、とやめる」 投資的行動を取った人は、すぐには目ぼしい結果は出ません。当然です。すぐには結果が出ないような努力だからこそ、挑戦したのですから。周囲から見ても、苦しそうに見えたり、無駄な遠回りをしているように見えます。 しかし、そういう過程の中にも多くの挫折や苦難がクリアされ、「もう、同じことでは悩まない」という自分が形成されているのです。つまり、「日々新しい自分」ということです。 反対に、「先生(環境、授業料、カリキュラム)が合わんかった」とやめた人は、新しくダイエットとかその他の習い事を始めるでしょう。それは「行動的」に見えます。「あたし、○○始めたっちゃん」と周囲の人に言い、本人も上機嫌です。 しかし数日後、高い値段をはたいて買ったダイエット器具には洗濯物が干され、習い事の教材が部屋に積まれているのは目に見えることです。それは当然です。この人は以前、「英会話が面白くなる前にやめた」という前歴を持っているからです。 この間にも、投資的行動を取った人は、着々と英語力を高めているでしょう。反対に、投機的行動を取った人は、またもや「何かないかなぁ」と思いをめぐらせ、何かやり始めるでしょう。 しかしそれが何であるか、もはやどうでもいいことです。すぐに諦めるのは分かりきったことだからです。辞める努力など、聞いても意味がありません。そして、就職活動の山場である面接の日を迎えました。投資的行動を取った人は、こう言います。 「それほど目覚しい上達を経験した訳ではありませんが、○年間英語を毎日学び、当初の○○○点が○○○点になり、英語のニュースが聞けるようになってきました」 投機的行動を取った人は、こう言います。「学生時代は英会話、スポーツ、通信教育、○○に挑戦してきました。チャンスを見つけたら逃さない私の行動力は、他人には負けません」 そして、面接官は投機的行動を取った人に、こう聞きました。「で、どんな結果を出しましたか?」。投機的行動を取った人は、答えられません。 面接官は、再度尋ねました。「あなたの取った行動の中で直面した挫折や失敗に対して、どう対処しましたか?」。投機的行動を取った人は、またしても、何も答えられません。 当然です。「私は嫌になって全てから逃げた臆病者・卑怯者です。色々やったのは、何も形にできず、自分から面白くする努力を放棄して、親の金と自分の貴重な時間を浪費した証拠です」なんていう事実は、とても答えられないでしょう。 よって、投資的行動を取った学生さんが採用されました。今は未熟でも、そういう姿勢で決意と向き合える人の方が、社会では確実に伸びるからです。 「色々やった」と履歴書の行数の多さを誇る人は、何を成し遂げたかを聞かれるまでは有頂天ですが、自分が何一つ責任を持って達成できず、長い学生時代に何も誇りを持って「やった」と言えることが一つないのを思い知らされた瞬間、凍りつきます。 その瞬間が社会人になってから訪れた人は、「私の思ってた仕事と違う」と言って辞めます。もう、どうだっていいことです。 ということで、仮に皆さんの周りに「色々やった」と言う人がいたら、「で、何をどう達成したの?」と聞いてみたらいいでしょう。 本当にすごい結果を出している友達や先輩からは、素直に認めて学びましょう。反対に、パフォーマンスや口先は達者でも、何も認める価値のある達成がない人は、遠ざけることです。そんな人の行動を見て、「行動力とはこういう能力だ」と勘違いすると、あなたの人生に及ぶ実害は測り知れません。 ということで、十や百の行動よりも、一つの達成にこそ個性が表れ、人の信頼を勝ち取る、というわけですね。 世の中、あちこち動き回っている人が「行動的」だと思われやすいものですが、本当に行動していれば、あちこち動き回るよりも、一箇所にずっといたり、決まったパターンの行動を繰り返すことが多くなるものです。 ダメな営業マンは、あちこちを訪問しまくります。契約が取れないからです。 ダメな会社は、広告を出しまくります。商品が売れないからです。 ある学生は、全国を飛び回ります。内定がもらえないからです。 諦めやすい学生は、色々と挑戦します。長続きしないからです。 止まっていたり、同じ行動ばかりしていたりするからといって「停滞的」だとか、動いているから「行動的」だと判断するのは、何の根拠もないことです。ただ一つ、「決意が形になっているか」だけを見れば足りることです。 優柔不断な人は、次々と新しいことに挑戦する人を見て、「行動的だね」と言いますが、結果を出すのが一番カッコいいのであって、優柔不断なのも単に新しいことばかりやるのも、結果を出さない点では変わりありません。 僕も「続けない人」、「諦める人」とは大事を語らず、一緒に仕事をしないことにしていますが、これは我ながら賢明な選択です。また、不器用でも要領が悪くても、一つのことをじっくりやる人は、年が若くても、経験が浅くても、必ず伸びます。 面接では、地味でもいいから「続けて結果を出したこと」を堂々と話しましょう。なぜなら、仕事は長期戦だからです。すぐに気が移り、別のことを考え始めて目の前の「以前の決意」を忘れる人間は、信用できません。 つまり、採用できないということです。 あなたが「信用できる人間」であることをアピールしたければ、何より継続と集中をアピールすることです。「私は勢いに乗ったら強い」とか言う人がいますが、そんなのは誰でもそうです。下り坂なら、自転車はこがなくても走ります。そんな状態を「強い」とは言いません。 本当に強い人は、「自分で勢いを作り出せる人」か、「逆境でも自分を奮い立たせることができる人」です。こんなに役立つ秘訣はありませんね。だって、誰も「できない」のではなく「やらない」んですから。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2008.05.08 02:27:58
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