子猫の災難これは、本当にあったお話です。今から私の体験をお話します。 *** *** *** 初夏のある日、我が家の倉庫から、 小さな小さな猫の鳴き声が聞こえてきました。 翌日、それは大きくはっきりと聞こえてきました。 その鳴き声を聞いて、猫の嫌いな我が家の番犬、 「大五朗」と焼酎の名前を付けられたメス8歳が、 しきりに吼えています。 いずれ母猫がどこかへ連れて行くだろう 私はそう思い、子猫のことは放っておくことにしました。 数日後、子猫の泣き声がしなくなりました。 親猫が連れて行ったのだろう・・・ と一応、念の為に、箱の中をのぞいてみました。 すると、堅くなった子猫の姿が目に入りました。 私は、急いで車を飛ばすと、動物病院に駆け込んでいました。 この子は、死んでいるのか? それとも生きているのか教えて欲しい 死んだいたら、埋めてあげるが・・・ 生きていたら・・・(其処までは考えていなかった私) ここは病院なのだ。 死にそうな動物がいたら、 当然、助けるのが医師としての勤めだ・・・。 ・・・あぁ、しまった (そこまでする経済的な余裕が、今の私にはないのだ その上、我が家の家族は、大の猫嫌いなのである) なかなか、返事をもらえない間、 私はずっと、そのことばかりを考えていた。 「命に別状はありません。 しかし、このままではいずれ弱って亡くなりますが どうなさいますか?」 私には、子猫を育てる意志が無いことを、必死に主張した。 「判りました。 それでは、一応応急措置はしましたので、 いずれ、回復するとは思います」と丁寧に箱に入れ、 子猫の体を温めるようにと、携帯用カイロまで入れてくれた。 「お代の方は・・・」と恐る恐る尋ねると、 「要りません」とのこと。 話の判る良心的な先生で良かった。 ・・・けれど、私はなんと思われているのだろうか 車のなかに戻ると暫くして、子猫が再び鳴き出した。 (元気になって、よかったな! 大きくなったら自立させよう それまでは、面倒をみようかな・・) 安易にそう思っていた。 我が家に帰ると・・・大ちゃんが相変わらず吼えていた。 ふと、私の頭に、先日YOUTUBEで見た映像が浮かんだ もしかすると、犬の大ちゃんが、母性本能を目覚めさせて 子猫を育てるかもしれない・・・ ふと、そんな夢物語を夢見てしまった私。 それが悲劇的結果を招こうとは、 そのときはまだ思いもしなかった。 「ほら、大ちゃん、子猫だよ~」 ワンワン吼えるだけ 「もっと、良く見たい?」 私は、箱から子猫を取り出した。 それが、間違いの始まりだった 手のひらに載せた瞬間・・・ 大ちゃんが・・・ 私は、そのときまで、大ちゃんが 子猫の頸を咥えて連れて行く・・・ そういう光景を期待していた しかし、目の前で起こった出来事は 正に、期待を大きく裏ぎられた惨劇でした。 大は、頸ではなく、頭ごとガブリと咥えたのでした。 しかも、1度ではなく、2度も3度も・・・ 死ぬを確認するまで・・・ 子猫の鳴き声は、いつかしか消えていました。 どう見ても、即死状態です。 私は、「なんてバカなことをしたんだ!!」 まず、犬の大に向かって怒鳴りつけました。 しかし、本当に悪いのは私なのです。 子猫の命を一度は助けた私・・・ しかし、その助けた命を、自らの手で消してしまった。 あぁ・・・この心の傷は二度と癒える事はない。 数ヶ月たって、再び、我が家の倉庫から 子猫の鳴き声が聞こえた。 親猫め・・・性懲りもなく・・・ 私は、二度と関心を寄せぬことにした。 しかし、子猫の死体があってはと・・・ 気になって、箱の中を覗いて見たが 今度は、もぬけの空であった。 *** *** *** もし、あなたならどうしますか? これが、子猫ではなく人間だったらどうしますか? 私は、そう考えて行動に起こしたのですが、 その後の結果を考えてはいませんでした。 この話を友人にすると、子猫を見つけた時点で 「捨ててしまえ」とそう言いました。 実は、私は親にも兄にも、 倉庫に子猫がいる話をしたのですが、 皆一様に「捨ててしまえばいい」と私に言うのです。 「なら、自分で捨てて来ればいい。 私には、そんなことはできない」と言い切りました。 ・・・結果からいえば、家族や、友人の意見が正しいのです。 面倒を見る気が無いのなら、命を助ける必要は無い・・・。 この世に生まれ出る命に、無駄なものはないというけれど 必要に迫られない命もあるわけです。 だからといって安易に、粗末にできるものでしょうか・・・ かの松尾芭蕉にこんなエピソードがあります。 旅の途上、かれは道端に捨てられた赤子を見つけた。 しかし、かわいそうではあるが、旅の身の上、 赤子を拾う訳にはいかぬ。 結局、芭蕉は赤子の脇に、自分のおムスビを置くと 「私に出来ることは、このぐらいじゃ」といって 立ち去ったそうです。 私は、知人から、こんな話を伝え聞いていたのです。 瀕死の子猫を見つけたとき、とっさに考えたのが 今の私にできることは何か・・・ それが子猫の生死を確認することだったのです。 教訓・・・野良猫命、安易に救うべからず。 彼らは、彼らのセオリーで生きている。 人の手を介在しなくとも生きてゆける。 ジャンル別一覧
人気のクチコミテーマ
|