ある日どこかで

2011/06/20(月)16:01

『シェルブールの雨傘』

フランス映画(62)

≪何もかもが、ただただ美しい!≫ 私はこの作品が大好きで、いいえ、作品と言うより映像と音楽に惹かれる、というのが正しいのかもしれません。先日同じく主演女優のカトリーヌ・ドヌーブの『ロバと王女』がWOWOWで放送される事を新聞で知り喜んでいたら、その前に本作も放送だと。実はもう随分長い事観ていなかったので観たい、観たいと思っていたのですが、レンタルショップでもなかなか見かけず、テレビでの放映も無かったので、とっても嬉しかったです。録画もしましたが、思わず放映を観てしまいました。 フランス、シェルブール。16歳の傘屋の娘ジュヌヴィエーブと20歳の工員の青年ギイは、若いながらも2人の将来のことを考えていた。しかし、ジュヌヴィエーブの母親は若すぎると反対する。そうするうちにアルジェ戦争への召集を受けたギイは旅立ち2人は離れ離れに。そして、ジュヌヴィエーブのお腹にはギイの子が宿っていた… この作品の一番の特徴は、全編台詞が歌と言う歌曲作品。オペラみたいなもんです。 とにかく映像がものすごく美しい!私が最初に観たのは多分小学生だったと思うのですが、その映像、色合いの美しさにうっとりして、フランスの家ってあんな感じなのだとずうっと思っていたくらいでした。何ともファンタジックで甘い感じの映像。ちょっとどぎついと感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、今回久しぶりに観てもやはりオープニングからラストまでこの映像美にはため息が出るほどでした。 あとは、有名なこのテーマ曲。本当に物哀しく、切なく、美しいメロディーに酔いしれてしまいます。カトリーヌ・ドヌーヴが最初16歳とは到底思えないのですが、彼女はやはりとても美しく、全体の素晴らしい映像美に一花咲かせています。ラスト、年を経てからの彼女はそれはもう、等身大の彼女で、貫禄もあり又より美しさを際立たせています。彼女が若い頃に着ている服のデザインも色も可愛くてステキです。 内容は、昔は何て嫌な女だと思っていたジュヌヴィエーブですが、今となってみればその気持ちもわからなくはない。彼女はまだ幼くて、ただ目の前にある幸せにすがりたかったのかもしれないと。2人とも今が幸せなのだからそれで良しとしましょう。でも、子供に付けた名前が、ギイを愛していた事を物語り、去っていく時の表情、雪、そしてあの音楽が流れると、何とも言えない切なさが込み上げてくるのでした。 これがね、全編歌じゃなかったらどんなにいいか。私はミュージカル映画は好きだけど、どうしてもこの形式にはついていけません。まるでオペラ。でもオペラ歌手はうまいからいいんだろうけど、ここでの歌はめちゃくちゃ巧いわけでもなく、高音部に至っては時折耳を塞ぎたくなるほど。 だけど、それを補うだけの映像美と音楽の良さがどうしようもなく魅力的。 だから、やっぱり「おすすめ」にしたのです。 LES PARAPLUIES DE CHERBOURG / THE UMBRELLA OF CHERBOURG 1963年 フランス 監督/脚本:ジャック・ドゥミ 音楽:ミシェル・ルグラン 出演:カトリーヌ・ドヌーヴ、ニーノ・カステルヌォーヴォ、マルク・ミシェル、エレン・ファルナー、アンヌ・ヴェルノン

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