ある日どこかで

2007/05/14(月)17:21

『BARに灯ともる頃』

イタリア映画(26)

≪バールの灯は温かい≫ 今は亡き二人のイタリア人俳優の最初で最後の共演作品。 父親は兵役中の息子に会うために、小さな港町を訪れる。弁護士の父親は仕事に追われて息子ときちんと話をしたことがなかった為、二人で話したいとやって来たのだった。 祖父の形見の時計や新車やローマの家をを息子にプレゼントすると言う父親。レストランでとても打ち解けたと思えた二人だったが、些細な事で喧嘩をしてしまう。 スコーラ監督の真骨頂とでも言いましょうか、一日の出来事をほとんど二人の俳優の会話で成り立たせています。 裕福な弁護士の父親。しかし、子供の頃からちゃんとした会話もなく、その罪滅ぼしとかどうか知りませんが、やはり気になるひとり息子の将来とかを案じてわざわざ訪れるのです。でも、この父親もどうも母親とは上手く行っていない様子。人恋しかったのかもしれません。 父親と大人になった息子との久々の出会い。イタリア人らしく熱い抱擁はあるものの、父息子間ならではの、ちょっぴり照れのようなものもあり、しかしやはり嬉しくもあり、その微妙な関係がこの二人の俳優達の演技で伝わってきます。 多くの人を見てきたはずの弁護士の父親。しかし、いざ自分の息子の事は何も知らず、他人から彼の将来の夢などを聞かされて愕然とし、息子は息子でもう大人としての自分を認めて欲しい、と父親を突き放すようにしながらも、やっぱりそこは親子。 イタリア人らしく二人は本当に良く喋る。ただ、男同士のどうでもいい会話劇と思ったらそうではなくて、父子のこれまでの関係や心の動きを巧みに会話で表現している深い作品だと思います。 名優マストロヤンニももういない。そして、『イル・ポスティーノ』では病をおして出演したトロイージですが、ここではまだ元気な姿が見られます。 原題の意味は「何時ですか?」だと思いますが、何だか味もそっけもないタイトルです。これは邦題が凄くいいと思いますね。 港町に陽が落ち、街灯に、そしてBARに灯がともる頃、固まっていた二人の心も次第に解けていくような、本当にそんな感じのステキな映画でした。 このポスターもステキです。 CHE ORA E? 1989年 イタリア 監督:エットレ・スコーラ 脚本:エットレ・スコーラ、ビアトリス・ラヴァリオリ、シルヴィア・スコラ 出演:マルチェロ・マストロヤンニ、マッシモ・トロイージ、アンヌ・パリロー、ルー・カステル

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