ある日どこかで

2007/08/29(水)14:43

『さよならCOLOR』

日本映画(52)

≪惜しみなく愛を与えて、与えて、逝った≫ 竹中直人ってちょっと気持ち悪い、くどい役が多いけどそこが面白くてついつい観てしまうのですが、この人の監督作品を観るのは初めてです。 これが、結構掘り出し物でした。 子宮癌を患った未知子が入院した病院の担当医の佐々木は、未知子の高校時代の同級生だった。しかし、未知子は佐々木の事を全く覚えていなかった。佐々木は長年付き合っている居酒屋の女将がいたり、女子高生に援交を申し込まれたりと、独身生活を謳歌していたが、実は未知子のことを高校以来ずうっと想い続けていたのだった。 正直言って、やっぱり竹中直人の演技はくどいし、あの独特の気持ち悪さも健在。設定もストーカーまがいの高校時代の様子にも伺えるように、竹中=佐々木 の図が違和感なく画面に映し出されていました。 未知子に自分の事を思い出してもらおうと必死にいろんな事をやってみたり、他にもいろんな箇所で、「それは必要かな?」と思える演出が多いようにも思えました。だけど、不思議と嫌な感じはしない作品だったのです。 未知子は長年の恋人がいるものの、入院中心細い時に彼は親身になってくれず、孤独感、病気への不安でいっぱいだった彼女を献身的に支えてくれたのが佐々木。最初は迷惑そうにしていた未知子も次第に彼に心を許していくのです。 竹中直人は、演技をしている時の自分の事をよくわかっているんだろうな。気恥ずかしいから、ストレートに愛を表現できない。カッコつけてはいるけれど、それがさまになっていない。(この人がカッコつければつけるほど私は気持ち悪く感じるのです)。だからそれが時には滑稽だったり、時には哀愁を帯びて切なさを醸し出す。彼自身そういうところがわかっているから、そこをさらけ出して見せる。そこまで見せられると、今度は可哀想になって応援したくなったりする。竹中がやるそういう役は、だからいつも最後には感情移入するところがあるのも不思議。決して好きじゃないんだけど。 病院は海の見える場所にあり、波の音が心地よくてまるでフランス映画のような雰囲気を醸し出しています。色彩も美しく、北野武監督の『あの夏、いちばん静かな海。』を思い出していました。 そして、未知子役の原田知世がいい。中年になっても少女の頃のままの透明感のあるステキな女優さんですが、久しぶりにそういった彼女の良さをこの作品で見ることが出来ました。 初恋の人はいつまでもこうあって欲しい、と言う多分理想の女性を描いていて、「現実はそうとは限らんよ」、と言いたくもなりますが、その気持ちはよくわかります。 脇を固める女優も又、しっかりと個性が描かれていていいのですよ。ただ、原田知世と竹中直人、忌野清志郎が同級生と言う設定にはかなり無理がありますが。 映画のタイトルにもなった『さよならCOLOR』。この曲に竹中氏がインスパイアされて撮った作品らしいですが、エンディングで流れるこの曲は、確かに本当に良くて、CDが欲しいと思っているところです。 青い空と海、色とりどりのガラスとそれで作られたランプ。いろんなシーンが曲と共に思い出されます。 出演者に、今は亡き人が何人かいらっしゃいます。今までの人生で経験した「さよなら」、これからもするであろう「さよなら」。出来るだけこの映画のように、優しく、穏やかな「さよなら」が出来たらいいな。実際にはとても難しい事でしょうけど… 2004年 監督:竹中直人 脚本:竹中直人、馬場 当 音楽:ハナレグミ 他 出演:竹中直人、原田知世、段田安則、雅子、中島唱子、内村光良、中島みゆき、水田芙美子 他

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