満ちて、月

2022/12/31(土)09:16

不思議の満月

不思議のetc.(36)

        その日をアパートを引き払う日にしようと決めたのは、二度目に伊豆へ行った2月12日で、遺品        整理の業者さんが見積もりに来た日だった。        この場所を完結させなければ、次のステップに進めない。そう思っていたものの、名残惜しさが        募っていた。その名残惜しさは、私自身がこのブログに何度も何度も書いているように、普段自        然が皆無の場所に住んでいるからで、母が晩年をすごしたからという感傷とは少し違うと思った。        以前書いたように、亡夫と出逢った場所でもあるし、要するに懐かしさもあいまって、自然を満        喫したかったのだ。おそらくもう、来ることはないだろうからと。そうやって、私は私のために、        ここで少し英気を養う必要があると思った。        業者の人はその日、希望であれば明後日からでも作業は可能との事だった。けれど、そ んな早        急にする予定ではなかったので、カレンダーを見ながら日を決めた。すると、前日に仕分けの作        業をするので、作業は2日かかるとのこと。きちんと法に則った方法で、処分をするためには必要        な日程だ。         アパートを引き払う日を、26日と決めた。ざっとの金額はその場で聞いたのだけど、何せ遺品整        理の相場などというものを知るはずもなく、数十万はかかることは覚悟しておいてくださいと、        最初に遺品整理の業者があるということを教えてくれた、母の葬儀をしてくれた葬儀屋さんから        聞いてはいた。        この葬儀屋さんと実際来てくれた遺品整理の会社は、実は全く関わりがない。関わりがないのだ        けれど、バトンはしっかり渡してくれたのだ。最初に私が伊豆へ行った時の、不可思議であるけ        れどありがたい一期一会の連鎖は、続いていたのである。        まだその、葬儀屋さんの話しさえ書いていないので、何がどうありがたいのやら、何が不思議だ        ったのやら、これを読んでくださっている人には、何一つもわからないですね…。はあ…映像で        見せたい…(-_-;)        それで、三度目、最後の伊豆へ行った時の事。23日か24日だったと思う。夕方さほど暗くはない        時間だったけれど、何か用事で外へ出た時にほとんど雲のない空に月が浮かんでいた。ああ、あ        の月だと、もしかしたらアパートを引き払う日が、ちょうど満月になるんじゃないかなと思った。        PCがあればすぐ調べられるのになぁなんて思ったけれど、月のことはそれきり忘れてしまった。        グッタリ疲れ切って、足を引きずりながら帰ってきた昨日26日夕方。息子がこの日にあわせて、        自分のお勧めだと言うミスドのドーナッツを買って来てくれていた。実は24日、ある番組を観て        いて、突然私の頭を自殺願望がよぎり始めた。        21日にアパートへ着いてすぐから、ずっとゴミの分別に頭を悩ませていた。遺品整理の金額を多        少でも節約できるんじゃないかと思ったものだから。何せ母の住んでいた場所は、私が在住して        いる場所より分別が細かい。各ゴミ出しの日が決められているので、一番多い衣類を燃えるゴミ        の日に出す為、急ピッチで作業していた。        翌日早朝が、その燃えるゴミの日だった。あの急な階段を、両手にゴミを抱え何度往復しただろ        う。それ以上だと、決められた集積所がほぼいっぱいになってしまったので、後は次週の業者さ        んが来る日の早朝にと思って、とにかく分別作業を続けた。        分別の冊子は、見かねた大家さんが持ってきてくださったので、それを見ながらできたけど、項        目にないものや判断のつかないものがたくさんあった。それまで2回の疲れが抜け切らぬままで        も、とにかくやらなきゃならないと思った。タンスや棚は、とりあえず全て空にすることができ        た。独り暮らしといえども、生きていると物は増える。それでも母は、いったいなぜこんなもの        を?と思うようなコレクションはなかった。        還暦の誕生日に贈った、私自身は一度も買ったことがない、両方でん~万円もするブラウスとカ        ーディガン。その後一度私のところへ来た時に着てきてくれたのだけど、それ以来着ていなかっ        たんじゃないかと思うその服を、自分の手で処分する。        お洒落な人だったので、私とは好みが違ったのかも。母は小柄で、Sサイズ。残念だけど、私には        着られない。2年半前なら着られたのに…( ̄ー ̄;)アバラウイテタノヨ…        もったいない、もったいないと言いながら、市の指定するゴミ袋へ衣類を詰めた。時間やその他        が許せば、こちらでリサイクルに出すことも出来たのにな。        あ、そんな調子だったので、24日はもう膝から下が激痛がするほど痛く、体はくたくたに疲れて        いた。明日いよいよ業者さんが入り、この部屋とも、この土地ともお別れだ。鬱病を抱えて、我        ながらよく独りでここまでたどり着いた…と思っていた。それなのに…。        やっぱりどこか無理をしている。何かをごまかしながら、踏ん張っていることに違いはなかった。        お芝居の場面がくるりと暗転するように、不吉なものが頭に沸き始めた。まずい…。頭の隅で、        刃物や紐のしまってある場所を探っている。夏のにわか雨の直前のように、心に黒い雲が急速に        広がっていく。テレビを消した。        まずい…これは、あの時のような、あの”魂の知恵熱”の時に起こった感覚と似ている。ならば大        丈夫、私には彼らがいる。彼らが一丸となって私を護るはずだ。落ち着こう…そう自分へ言い聞        かせる。              ★☆━━━━━━━━━━━━━☆★        ああ、ちょっと今これを書きながら、感覚を思い出してしまったものだから、ちょっとまずいか        なと思っていたら、昨日ヤマトで出した荷物が届いて、馴染みのO2くんだったあ~♪私にはけ        っこう重いので、持ち込めずに集荷に来てもらったんだけど、前回同様に集荷のSDは3つの荷物        を全部抱えて、あの急な階段を軽々と下りて行った。        こっちでは誰かなあと思っていた。流石O2くん、3個全部抱えて持ってきたぞ!小柄な青年なん        だけどね。夫と同じくらいかも。ああ、久し振りで彼の顔を見て声を聞いて、うれしかった…。        一時期は辞めるなんてことをも言っていたんだけど、私がヤマトを辞めた後で結婚した彼は、一        家の大黒柱だもんな。ああ、彼に救われた…。        ま、一事が万事、ピンチの時はこんな感じのタイミングの連続で、この1ヶ月が過ぎたのですよ…(@_@;)              ★☆━━━━━━━━━━━━━☆★        後になって思う巫病魂の知恵熱の後半を過ぎた頃、いつ終わるとも知れない毎日の中、一晩寝て        しまえば次の朝は楽だった。それを思い出し、強く心に念じる。私には彼らがいるっ。最強のガ        ーディアンがいてくれるんだっ!本当は音楽があったら、簡単に気がまぎれるのに…。とりあえ        ず眠剤を飲み、息子へ電話をする。        いよいよ明日業者さんが入るんだけど、なんだか疲れてしまって、おまえの声が聞きたくなった        と。すると、いつ帰ってくるの?と息子。なんだろうと思ったら、その日にお勧めドーナッツ        を買って置くからだって。何か察したのかな。だってそれ、私が生きて帰らなきゃ食べらんない        もんね。        疲れた体に、程よい甘さのドーナッツが美味しかった。PCを開き書き込んでいただいたコメント        に目を通し、お馴染みの皆さんのブログをぐるりと周り…。自分のブログへと戻ってきたら、サ        ニーさんの書き込みが増えていた。満月…あっ!そうだ!やっぱり今日が満月だったのか…(@_@;)        ブログのトップにある地球の画像は、「今日の月」というサイトへのリンクになっている。入        ってみたら月齢15日。このサイトは、カレンダーのペ-ジに説明があるように、少し誤差が生じ        るため、カレンダーでは25日が月齢15日で満月になっているけれど、他数箇所で調べたところ、        26日が満月で間違いない。        実は本日27日、私が驚愕する事実を知らせる電話があって、いわばもう一つの物語の幕が下ろさ        れた感じの強烈な出来事が、26日だったと…。なんということだ…と唖然とするような、いや、        あまりのことに実際に唖然とした。皮肉のような、幸運のような、後ろめたいような、いった        いこの複雑な心中を、どんな言葉で表現したらいいんだ…。そのことで楽になったのか、より複        雑になってしまったのか、現段階ではとてもではないけど私には判断できない。        やっぱり…そういっていいと思う。いや、これはもう、母があまりの理不尽さに激怒したとしか        思えない。火葬場で私が母の肉体へ、最期の別れで言った事は…。順番が狂うと自分でわけがわ        からなくなるので、内容は省くけれど。        気がつけば今日は27日。母の件で一報をもらったのが1月28日の夜。検死の結果母の死亡推定時        刻は、27日の朝だったろうとのことだった。        ん?ちょっと待てよ…ちょうど1ヶ月と言うことは…。なんと、母の命日1月27日も満月じ       ゃないか。そして、伊豆の章に幕を下ろした昨日、2月26日も満月とは…。        世の中は、科学が全てではない。科学は…万能ではない。目に見えて、手で触れられることが全        てではない。ああ、この1ヶ月を、すべて映像で見せることが可能なら…。学者さん、そういう        物を、作ってちょ~だいましっ! *☆*:*☆*:☆*:☆*:☆*:☆*:☆*:☆*:☆*:*☆* 贖い(あがない)は、人生において相当な覚悟を決めると起こるのだろうか。いや、まだこれが贖いかどうかは、わからないのだけれど。もしもそうなら、受けるのは”魂の知恵熱”の時に次いで、二度目なんだ。夫が癌を告知されて、私と二度目の恋に落ちた時、最後のプレゼントだと思ったと言っていたっけ。それもまた、彼にとっては贖いだったかもしれないなと、ふと思った。 ★ Muse - Exogenesis: Symphony Part 3 (Redemption) ★

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