2018/06/05(火)01:01
初夏の花
あまりにも土地がないものだから、この辺の花好きさんは自宅周辺の猫の額のような場所
に鉢を並べるし、それが高じて次第に道路にはみ出してきてしまう。街路樹の根元に、歩
道のアスファルトがぐるりと空いている部分や、歩道の植え込みの際にまで花を植え、道
行く人の目を楽しませてくれる所もある。
ある商店街の通りは、その街路樹のぐるりにブロックを置き、盛り土をして綺麗に花で整
えられている。たぶんだけれど、その街路樹が前にあるお店のご主人が花好きだと、街路
樹のそばに鉢を置いている箇所もある。全体は町会で管理しているのだと思うが、町単位、
商店街単位の狭い範囲で、公共の場所がどう整えられているかで、住民の思いが見えてく
るような気さえして。
この辺ではその商店街の通りが、冬以外いつ行っても街路樹の根元は落ち着いた花があり、
つい足を止めてしまう。派手な一年草の花を毎年植え替えるのではなく、宿根草や花の咲
く低木を植えている。先日は、楚々とした淡い色のアジサイの隣で、タチアオイがお日様
に向かって咲いているのを、建物の影に避難して歩きながら見ていた。
咲く花で感じる初夏の風情は、なかなか好いものだ。ある御宅では、紫のホタルブクロが、
コンクリートの隙間から2株生えていて、今年も花を見ることができた。またある御宅で
は、まだ開き始めぬ南天のつぼみが、プリッとした白い米粒のように可愛らしかった。網
の目のにような道路を行き交う車の排気ガスを、呼吸しながら生きていることを、しばし
忘れる。
他では見たことが無いのだが、この商店街には私の大好きないんげんの天ぷらを、手のひ
らほどの大きさでとても安く売っているお店がある。消費税が導入されても、野菜の天ぷ
らは値上していないという、信じられないほどありがたい、本業は定食屋さん。
ところが去年だったか、久しぶりで行ったらご主人の体調が悪いとのことで、シャッター
が下りていた。その後再開したものの、先日はまた同じ理由で閉まっていた。高齢の人が
これからの猛暑の夏を、厨房で過ごすのはさぞかししんどかろう。よくこれまで頑張って
こられたこと…。人気のお店だったからなぁ。
そう言えば…と思って、今高校時代にバイトをしたラーメン屋さんを検索したら…。ああ、
2014年に帰省した時に寄っておけばよかった。何十年も食べていなかったたれカツ丼が
どうしても食べたくて、その店の向かいにある食堂で、店の主人と「〇〇屋で昔バイトを
したことがあるんですよね」なんて話しながら、窓からその店を見ていた。「〇〇屋さん
も後継者がいないからなぁ」と、食堂のご主人から聞いてはいたんだけれど、とうとう…。
でも、あの時、在りし日のお店を見られただけでも良かった。食べログなんてものがネッ
トにできてしまい、忙しかったかな。おじさん、おばさん、お疲れさまでした…(T-T)
さて、天気予報を見ると、明日梅雨入りなんだろうか。風さえ強くなければ、静けさをも
たらし、空気を洗ってくれる雨だけど。
★ 久石譲 - 帰らざる日々 ★