天使の降りた家

​先日の夜、寝る前の事。
子供たちを順番に「大好き～♡」とギューをしていると遥音が
「弦ちゃんにもギューしてあげて」と言ってくる。

毎回、自分がギューされると必ず
「弦ちゃんにもしてあげて」と言う。

私が「どうしてそんなに優しいの？」と聞くと

う～んと考えてから
こんな事を話してくれた。


「弦ちゃんは動けないでしょ。
痒いとか、痛いとか、ギューして欲しいとか
自分から言えないでしょ。
ママからも、エライねとか、好き嫌いしなくてすごいね、とか
言われないでしょ。

だから僕が、弦ちゃんの気持ちを言ってるの。

後ね、ぼくがいつも気を付けているのは
弦ちゃんのよだれが垂れていたら、拭いてあげるの。
だって、もし自分の顔によだれとかが付いていたら不快だし、痒いでしょ。

それから、首が傾いていたら、真っ直ぐにしてあげるの。
だって首が傾いたままだと、寝違えて痛くなるでしょ。

ソファーの隙間に首が入って上を向いてしまっていたら、直してあげるの。
上を向いたら苦しいでしょ。

テレビのどっちが見たいかも、聞く様にしているんだよ。
どうやっているかってね
『ドラえもんがいい？』『妖怪ウォッチがいい？』って聞いて
ちょっと二つの質問に間を開けて、
いいと思う方で『あ～』って声を出したら、そっちにしてあげるの。

後ね、弦ちゃんの目線の先を見て、ちゃんとテレビが見えているかな、とか
足が落ちそうになっていたら寄せてあげるとか
ほのかが乗っかっていて重たくないかな、足はきつくないかな、とかね。」


そこまで言うと
「あ～、僕の心の中、ぜーんぶ話しちゃった！」と
まるで秘密に心に閉まってあった自分の秘宝を
教えてしまったと言わんばかりでした。

よく見ているなぁ。
いつもそんな所まで気にかけていたんだなぁと、
彼の洞察力、観察力に私は感心してしまった。

「はーくんの弦ちゃんに対する愛は、半端ないねぇ。」と私が言うと


弦ちゃんへの愛？でもないなぁ
弦ちゃんへの優しさ？でもないなぁ

まぁ、要するに

​​​​弦ちゃんへの思いの分け合い？
代弁する？​​

​​かなぁ。
弦ちゃんはきっと、こう思っているんだろうなぁって。

ぼくは兄弟係なんだよ。
弦ちゃんの気持ちを伝えて、代わりに手足になる、兄弟係。


その後、遥音はその『兄弟係』というのを思い付いてから
その言葉がとてもしっくり来た様で
何度も「兄弟係」を口にしていました。

ママの愛がぼくだけに来ない様に
弦ちゃんにもママの愛が来るように、
僕がその弦ちゃんの兄弟係をするんだ、と。


ほのかも弦ちゃんも
二人の会話を聞きながら、寝てしまいました。
もっと思っている事ある？と聞くと

ママに注意して欲しい事がある、と。

一つめは
寝る前の絵本を読む時、弦ちゃんにもっと見える様にして欲しい。
僕は見えなくてもいいから、弦ちゃんに見える様にしてあげて。

二つ目は
ご飯の時、顔にご飯が垂れていたら、もっとこまめに拭いてほしい。
痒くなるから。
くしゃみした時は、汚くないから、「うわ～！」って言わないで。
（くしゃみをすると口の中のものが飛び散る）
吐いた時は、顔をもっときれいに拭いてあげて欲しい。

三つ目は
僕とほのかがケンカしたりして、弦ちゃんが不安がったり怖がったりしていたら
ぎゅっとして大丈夫だよって慰めてあげて欲しい。


という事をお願いされました。


あくまで、弦ちゃんにとって、弦ちゃんの事を考えての言葉に
言葉が出ませんでした。

９歳とはいえ
ここまで兄の事を考えて、兄の気持ちになって
考える事が出来るんだなぁ・・・と。

遥音は産まれた時から弦ちゃんの側に居て、弦ちゃんをよく見ていた。
まだ小さい時から誰にも言われないのに
弦ちゃんのよだれを拭いたり、バギーを押したり
弦ちゃんを笑わせ、弦ちゃんの側にいた。

彼の弦ちゃんに対する想いが
こんなに深かったとは・・・・



ママはね、
弦ちゃんの成長や考える事にも興味があるんだけど
はー君やほのかがどんな風に思っているのか
そういう事にもすごく興味があるんだ。

弦ちゃんのきょうだいとして育ったはーくんとほのかが
どんな事を感じて大きくなっていくのか
すごく興味を持っていて、知りたいと思っているんだ。

今日は、はーくんの気持ちを聞かせてくれてありがとう。
また、話を聞かせてね。



我が家のテレビを見ている時の風景。
ただ三人が折り重なって見ているだけだけど、
弦ちゃんがきつくないか、辛くないか、見えているか、と
はーくんは気にかけながら、見ているんだね。
​