ひとりごと

2007/07/22(日)10:54

小さな祈り

朗読(5)

今年の「夏の朗読会」が終わった。 今年で3回目になった。 私が今回読んだのは、新谷君江さんの手記。 練習中も涙がこぼれて仕方がなかった。 公演に来てくださった一人一人の心に 少しでも届けることが出来ればとステージに立った。 「真白いごはんを」  勝司ちゃん、あなたが生まれて 二週間後に「支那事変」が始まり、 そして八月六日から十日後の終戦。 戦争の間にあなたは生きていたのね。 人間らしい楽しい生活も知らないままに。 あなたが、もの心ついた頃から 夜は燈火管制で暗闇の生活。 食べ物は大豆ごはんや糠のまじったおだんご。 あなたは大豆ごはんが大嫌いだった。 八月六日のその朝も、お母さんは しかたなく大豆ごはんを炊きました。 「嫌い」と言ったあなたは、お母さんに叱られて、 涙をいっぱい浮かべて食べました。 そして学校へ行ったのね。 ランドセルを背負って「行ってきます」と・・・ これが最後の言葉でした。 あなたはそのまま二度と お母さんのもとへは帰ってこなかった。 あの時なぜ叱ったのだろうと、二十数年経った今も 心に残ってしかたがないの。 あなたは、どこで死んだの。 火に包まれながら「お母さん、お母さん」と 泣き叫んだのではないかしら。 全身に火傷をおいながら、苦しい息の下から 「お母さん水を、お母さん水を」といいながら 息絶えたのではないかしら。 どんな姿になってもいい、 もう一度お母さんのところへ帰ってきてちょうだい。 そうしたら、この胸にしっかり抱きしめて、 そして真っ白いごはんを、 お腹いっぱい食べさせてあげたいの。 これがお母さんの切なる願いです。      「忘れないあのこと、戦争」より 文芸社   早乙女 勝元 選 

続きを読む

総合記事ランキング

もっと見る