Carolyne Walker Bynum, Docere verbo et exemplo. An Aspect of Twelfth-Century Spirituality
Carolyne Walker Bynum, Docere verbo et exemplo. An Aspect of Twelfth-Century Spirituality, Missoula, Scholars Press,1979 以前紹介したCaroline Walker Bynum, Jesus as Mother. Studies in the Spirituality of the High Middle Ages, University of California Press, 1982の第1章における主張のもととなる著作です。 同書第1章について、本ブログでは、次のように紹介しました。 「聖職者でありながら、修道士的な生活を送る律修聖堂参事会員が、いかなる霊性を有していたのか。彼らと論争を繰り広げた修道士たちと彼らの間に、どのような違いがあったのか。バイナムは、律修聖堂参事会員の霊性を特徴づけるキーワードとして、「言葉と生き方(模範)で教えるdocere verbo et exemplo」を挙げます。一方、シトー会士には、修道士に他者を「教える」という役割をあまり認めないという性格が指摘され、両者の違いが他者を教えることについての態度の相違から浮き彫りにされます。」 本書は、律修聖堂参事会員による主要な著作と、修道士(いわゆる伝統的な修道士と革新的な修道士たちの両者)の著作を分析し、上記の指摘を繰り返し主張しています。 本書の構成は次のとおりです。 ――― 前書き 略号 序論 第1部 律修聖堂参事会員と教育への関心 第1章 史料 第2章 個々の論考 第3章 文脈 第2部 学ぶ者としての個人への修道士的焦点 第1章 史料 第2章 初期12世紀:個々の論考 第3章 後期12世紀:個々の論考 第4章 相違点と類似点 付録1.スマラグドゥスの聖ベネディクト戒律への注解 付録2.Expositio in Regulam Beati Augustiniをサン=ヴィクトルのユーグに帰すことに対するひとつの議論 参考文献 索引 ――― 以下、ごく簡単にメモ。 前書き…本書の目的=「言葉と模範で教える」という概念の研究;本書が博士論文をもとにしていること 序論…修道士・律修聖堂参事会員をめぐる研究史;両者の違いの本質=律修聖堂参事会員は自らを「言葉と模範による」隣人たちの教師として捉え、修道士は自らを学ぶ者、神を求める者としてみる。 第1部と第2部は同様の構成。それぞれ第1章で主要史料の概観を描き、第2章(第2部は時代により第2章と第3章に分かれる)で個々の史料の内容を丹念に分析し特徴を抽出、最終章で全体の総括、という構成。 だいぶ流し読みになった部分もありますが、構成がしっかりしていて議論も追いやすく、また本書の要点が繰り返し主張されていることもあり、読みやすかったです。 私の研究関心からいえば、本当はもう少し早く手に取り読んでおくべき著作でしたが、この度通読できて良かったです。 (2020.04.03読了) ・西洋史関連(洋書)一覧へ