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2005.08.22
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ロベール・エルツ(吉田禎吾・内藤莞爾他訳)『右手の優越―宗教的両義性の研究―』
~垣内出版、1985年~
より、「右手の優越―宗教的両義性の研究―」

 本書には、もう一編「死の宗教社会学―死の集合表象研究への寄与―」という論文が収録されていますが、ここでは「右手の優越」を簡単に紹介します。
 後日、「死の宗教社会学」の紹介を書く機会があれば、本の紹介という形にして、この記事にもリンクをはり、二つの論文を参照できるようにしようと思います。とはいっても、なにぶん理解が十分できませんでしたので、たいした紹介にはならないと思いますが…。

 まず、右手のもつ、名誉、特権、貴族性の象徴と、左手のもつ侮蔑され、賤しい補助的役割、庶民性の象徴が対比され、これらの由来はなにか、と問題提起がなされます。その後、「1.有機体の非対称性」「2.宗教的両極性」「3.右と左の特徴」「4.両手の機能」という四つの章立てで論じられ、最後に「結び」がきます。
 1章は、人体の非対称性について述べています。左脳が右手をつかさどる。人間は左脳が発達している。だから右手が強い。たしかにこういうこともいえるけれども、左利き(さらに両利き)の人々の例もあり、右手の優越を語るには十分ではないと言います。「解剖学は、右手を尊重するという理想の起源を、またそういう理想の存在理由を説明することはできないのである」(137-138頁)
 2章は、聖なるものと俗なるものの対立、二元論を論じています。現在、こういう表現はあまり使われていないのかもしれませんが、本書の表現を借りれば、「未開人」の事例が多く紹介されます。
 3章は、右と左に与えられた属性について論じています。まず、印欧語にある、左右を意味する言葉の歴然たる対象について論じます。<右>は、物理的な強さ、<器用さ>、知的<正確さ>、良識、<正しさ>などを意味し、<左>は、その逆を意味するといいます。たしかに、rightは、「正しい」という意味でもよく使われますね。
 マオリ族は、<右>が<生命の側>であり、<左>が<死の側>だという観念を持っているそうです。具体的な儀式が例示されます。
 4章は、宗教的儀礼や狩猟、戦いでの、右手と左手の役割を論じています。右手は、神聖な手であり、左手は不浄な手である。不浄が神聖なものに優る―生よりも死の方が優るとしたら、「それは人類の滅亡、すべての終末にほかならない」といわれています。だからこそ、右手の覇権は、「創造された宇宙を支配し維持する秩序の必然的な結果であるとともに条件でもある」というのです。
 結びでは、こうした宗教的表象は、こんにちでは衰えてきている、と指摘されています。
   *
 象徴についての研究は、難しそうだなぁ、と感じてしまいます。歴史認識にしてもそうですが、そこにはいろんな価値判断、認識がありうるからです。国や立場が違えば、歴史上の事件の評価も違ってくるでしょう。やはり、一次資料を自分自身で検討し、他の研究者の見解も参考にしながら、自分の考えを明確に打ち出していくしかないのでしょう。裏付けがしっかりしていれば、説得力も増してくるでしょう。宗教的儀礼について、私は十分に勉強していきているわけではないので、この論文についてあまりコメントはできないのですが…。





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Last updated  2005.08.22 11:44:30
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