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のぽねこミステリ館

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2007.01.27
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横溝正史『喘ぎ泣く死美人』
~角川文庫、2006年~

 いままでの作品集に収録されていない、横溝さんの初期の作品を集めた短編集です。ショートショートも収録されていて、たしかに、いままでに読んだことがないような作品も読むことができて嬉しかったです。
 以下、簡単に内容紹介を。

「川獺(かわうそ)」名家の令嬢、お蔦が、毎日のように夜になると出かけていく。村には、一揆を起こしたかどで殺された人々がまつられている祠が池のそばにあり、彼女はその湖に向かっているという噂がたっていた。さらには、嫁入り前のお蔦には悪いことに、その池の川獺の子供をみごもっているという噂がたった。それでも、夜には出かけていく彼女だが、ついには殺されてしまう。その後も、彼女の継母など、二件の殺人事件が続く。
   *
 久々に横溝さんの短編を読んだわけですが、本当にわくわくしながら読みました。なぜ、お蔦は夜になると出かけるのか。物語にはさらに、同じく夜になると出かける若い僧侶も登場し、彼らの関係やいかに、とどきどきするわけですね。
 三人の人物を中心に、節ごとにその人物の焦点をかえていくという手法でした。節がかわると、どう話がつながるのかと気になるわけですが、楽しく読みました。

「艶書御用心」友人から、14人の女性の袂に名刺を入れた男の話を聞いた水谷は、自分もそのまねをして、なんとか恋人をつくろうと考えた。名刺を配るものの、まったく返事がないと不安になっていたとき、彼にラブレターが届く。
   *
 これは愉快な話でした。不審なラブレターなので、なにかとんでもない事件に巻き込まれることになるのかとどきどきしましたが、そんなこともなく、ラストはほのぼのでした。

「素敵なステッキの話」
   *
 雑誌記者の本田さんが叔父からもらったステッキが、本田さんが担当する作家の間をめぐりめぐって…という話。こちらもほのぼのでした。

「夜読むべからず」ロンドンのクラブに集まった人々が、怪談をしようという話になる。そこで、探検家のハンソン氏が、自分が南アフリカに行ったときに発見した奇妙な遺体と、その遺体の手が握っていた手記の話を始める。
   *
 タイトルからも分かる通り、ホラーです。これもなかなかでした。

「喘ぎ泣く死美人」
   *
 表題作です。ロンドン近郊の、幽霊話が伝えられる邸宅を買った夫婦。妻はアメリカ人で、幽霊を信じておらず、もしいるようなら会ってみたいという女性です。その夫が出かけた夜、広い邸宅で一人でいると、彼女も不安になってきます。そこに、女性と男性の幽霊が現れ、彼女たちが殺されるシーンが再現されるのでした。
 タイトル通りに幽霊が登場するとは思っていなかったので、意外な感じでした。ホラーというか、幻想小説というか。やっぱりラストが良かったです。

「憑かれた女」幻覚を見たり、悪夢にうなされたりして、ついには寝ることも不安になるほどの症状をもつエマ子。彼女がお世話になっているマダムから、エマ子を気に入ったという外国人男性を紹介される。ところが、外国人に奇妙な屋敷に連れられると、そこで彼女は、湯船で死んでいるように思われる女性と、夏にもかかわらず火が燃えている暖炉で焼かれている、女性の足を見ることになる。そして、彼女の関係者が次々と殺される。
   *
 同題の短編の原型だそうです。由利先生シリーズの一つのその作品は私も読んでいるのですが、すっかり内容を忘れていました。この短編集の中で一番長い作品です。

《ショート・ショート・ストーリー集》
 この部分には、9編のショート・ショートが収録されています。その中の一つには、山名耕作という作家が登場するのですが、横溝さんは「山名耕作の不思議な生活」という作品を発表しておられるので、ちょっとテンション上がりました。その他、「地味屋開業」など、ほのぼの作品がけっこうあります。

「絵馬」
  *
 岡山県総社の元刑事・浅原さんから、過去の事件を聞く、というスタイルです。総社はうちから一時間ほどで行けることもあり、地元が舞台だとやはりテンションが上がります。老婆が何者かに殺される。物取りの犯行とも思われたが、それには不審な点も見受けられる。独自に捜査を進める浅原さんは、老婆をめぐって過去に起きた事件を知り、真相にたどり着きます。横溝さんの世界が堪能できる作品ですね。

 その他、本書の単行本版にも収録されていなかった二編の短編が収録されています。

   *   *   *
 大きな仕事にも一段落つき、読書自体が久々で楽しみだったのに加え、久々に未読の横溝さんの作品を読めたので、とても良い読書体験でした。ユーモア作品もけっこうあるのが嬉しかったですね。「艶書御用心」が印象に残っています。






Last updated  2007.01.27 08:18:40
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