カテゴリ:本の感想(た行の作家)
筒井康隆『原始人』
~文春文庫、1990年~ 13編の短編が収録されています。それぞれの内容紹介は大変なので、まずは目次を掲げた上で、印象に残った話についてコメントを書くことにします。 目次は以下の通り。 「原始人」 「アノミー都市」 「家具」 「おもての行列なんじゃいな」 「怒るな」 「他者と饒舌」 「抑止力としての十二使徒」 「読者罵倒」 「不良世界の神話」 「おれは裸だ」 「諸家寸話」 「筒井康隆のつくり方」 「屋根」 表題作は、性欲やら食欲やら、とにかく自分の欲求をなにより優先する原始人の話。だいたいオチにくる言葉は想像できましたが(というか、読みながら感じましたが)、面白かったです。主人公の原始人が一緒に暮らしていた「歯抜け」を殺した後に感じる心理は印象的でした。 「アノミー都市」も、面白いなぁと感じながら読みました。働く必要も、場合によってはお金も必要のない世界が舞台ですが、お金をもち、使うことは一種の刺激になるようです。人々は、簡単な契約(登録)をするだけで、自分に向いたどんな仕事でもすることができ、給料をもらいます。ラストでは、ただのはちゃめちゃではない余韻のようなものも感じました。 「読者罵倒」は、すごいタイトルだなぁと思いましたが、タイトル通りの作品でした。罵倒されます。想像力が欠如しているため小説が分からないといい、ものを理解できないくせに小説に刺激を求め、同時に自分が傷つくことはいやがる読者。ここでの指摘が自分にまったくあてはまらないわけでもないので、その点は考えさせられました。興味深かったのは、友達が面白くないといった作品を読んでみると、やっぱり面白くなかったというのは、同レベルの頭の人間が群れるのだから当たり前だ、という指摘。これはなるほど!と思わされました。…けれど、面白くない作品というのもあると思うのですが、ねぇ…。 本書の中でも、「不良世界の神話」は、私が大好きなタイプの作品です。古事記のパロディですね。ツーロキーゴとザークヤが神々を生んでいきます。建て売り住宅の神ウサギゴーヤとか、税金を司る女神サシオサエなども登場します。かたちとしては、未来(21世紀以降?)の世界(日本)の神話ということになりそうですが、20世紀から形成されているという設定でもあります。 「屋根」「他者と饒舌」などは、純文学的な雰囲気が強いですね(「純文学」というジャンルがなにを意味するのかなんとも言えないですが)。 裏表紙の紹介で、「元気の出る小説13篇」とありますが、「読者罵倒」なども含まれていることを考えると、これは(解説でも指摘されているように)ブラックユーモアですね。あ、話は前後しますが、ユーモアといえば、「怒るな」も面白かったです。 やっぱり筒井さんの作品は面白いなぁと感じました。 *昨日は休日ということもあり、古野まほろ『天帝のつかわせる御矢』を読んでいたのですが、途中で断念しました。やっぱりルビやら変な言葉遣いやらがしんどかったです。けれども高い本ですし、いずれ余力があるときにきっと読みたいと思います。 …今後『天帝』シリーズが出るとすれば、そのときは購入するかどうか考えるかもしれません。 *テーマは、「最近、読んだ本を教えて!」にすることにしました。いままで、「今日読んだ本~」を選んでいましたが、厳密には前日に読んで感想を書いた作品についての記事を翌朝アップしているので。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2007.06.19 08:02:21
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