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2007.07.26
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笠井潔『バイバイ、エンジェル』
~創元推理文庫、1995年初版(1999年第7版)~

 副題(表紙ではなく、標題紙にあります)は、「ラルース家殺人事件」。
 笠井潔さんの初の小説にして、探偵・矢吹駆シリーズ第一作です。それでは、内容紹介と感想を。

 わたし―ナディア・モガールと日本人留学生・矢吹駆は、アラン・リヴィエール教授の講義がきっかけで知り合うことになった。
 ナディアは、友人のアントワーヌ・レタールから、スペインで死んだはずのイヴォン・デュ・ラヴナンからと思われる脅迫状が届いたことを知らされる。イヴォンは、アントワーヌの友人・マチルドの父。アントワーヌは、イヴォンの従者としてともにスペインに行ったジョゼフ・ラルースの孫にあたる。父を尊敬するマチルドは、父が事件を起こすことを心配していた。
 ナディアは、なにか事件が起こる予感がすると、カケルに話していた。年末に催された、アントワーヌのおば、オデット・ラルース(ジョゼフの次女)のバースデイ・パーティに招待されたナディアは、そこで、どろどろした人間関係を見る。
 そして、年があけ、1月6日に事件が起こった。オデットのアパルトマンで、首を切断されたオデットと思われる女性の死体が見つかったのだった。

 なんだかんだで、本書を読むのは3度目のような…。一度目は、なんとか読めたというところ。二度目は、『サマー・アポカリプス』を読むため、本書の内容を思い出すために。そして、今回、あらためて記事のかたちで感想を書くために読みました。…シリーズ第三作『薔薇の女』を購入したこと、もう何年も『哲学者の密室』(KAPPA NOVELS版)を本棚のこやしにしているこの状況を打破したいという思いもあります。
 矢吹さんの推理は、「現象学的直観」によっています。今回、やっとその意味がなんとか分かったような…。
 ある状況からは、それを説明する無数の推理がなりたつ。本書の主題は「なぜ死体は首を切られたのか」ということですが、それを説明する推理はいくらでもありえるというのですね。また、オデットの事件の場合には、その他多くの不審な点がある。それぞれの点について、無数の説明がなりたつ。その中で、一つの「真実」を選ぶ方法が、「現象学的直観」ということです。具体的には、いくつもの不審な点のある事件を、一つのまとまりとしてみること。その中で、支点となる謎(オデット事件の場合、「なぜ死体は首を切られたのか」)を見いだし、その本質を直観し、それを導きの糸として、事件を構成する様々な要素を論理的に配列すること―ということですね。
 と、このように、正直本書は難しいです。ナディアの語り口もそう読みやすいわけでもなく、矢吹さんは難解な言葉をつらつらと語ります(それなりに分かりやすくはされていますが…)。もっとも、その矢吹さんの陰鬱な語りに、ぞくぞくしながら読み進めたのでしたが。同じく、矢吹さんが珍しく熱い口調で語るところもぞくぞくしました。

 とても久々ですが、印象的な言葉があったので、引用します(文字色は反転しておきます)。

人間とはしょせん盲目的な生命エネルギーの束に過ぎない、自己保存だけが原則の、飢えと欲情を満たそうとして蠢く生臭い細胞の塊に過ぎない」(194頁)





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Last updated  2007.07.28 20:46:27
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