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のぽねこミステリ館

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2007.10.05
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筒井康隆『将軍が目醒めた時』
~新潮文庫、1976年~

 10編の作品が収録された短編集です。収録作品は以下の通り。

「万延元年のラグビー」
「ヤマザキ」
「乗越駅の刑罰」
「騒春」
「新宿コンフィデンシャル」
「カンチョレ族の繁栄」
「注釈の多い年譜」
「家」
「空飛ぶ表具屋」
「将軍が目醒めた時」

 全てについて紹介するのは大変なので、印象的だった作品について、つらつらと書こうと思います。

 最初の二作は、ドタバタ時代物(?)ですね。前者は、井伊直弼の首でラグビーする話、後者では、秀吉たちが新幹線に乗ります。

「乗越駅の刑罰」は、解説で長部さんも絶賛しておられますが、印象的な話です。乗越料金をうっかり払えないままに地元の駅に戻ってきた主人公が、駅員にぼろくそに非難され、拷問じみたこともされ、家族からも非難される話です。いたたまれない気分になります…。

「騒春」も、なんとも不快な話でした。男子学生たちが、金持ちの一人の家に二人の女子学生とともに集まり、さらには女子学生たちを乱暴しようとする話です。…どたばたの感じもないため、もやもやと不快な感じが残る話でした。

「新宿コンフィデンシャル」は、おっ、これは面白いと思いながら読み進めました。人が驚くようなことは誰かがやっている、人が驚かないようなことはもっと多くの人がやっている。そこで、自分は、自分が何をやっているかも分からないことをはじめる、という男性が主人公です。初期、彼と行動をともにしていた珍子さんの協力で、事務所じみたものをもち、拾ってきたコンフィデンシャルという看板を掲げてみると、そこはコンフィデンシャルとして機能しはじめた。外から問い合わせの電話もかかるようになり、事務所も拡大し、どこからか謎の指令が届くようになる…という話。
 冒頭から、これは面白そうだと思いましたが、自分が何をしているかも分からないことを初めながらも、そのことが自分の分からないまま機能するようになり、仕事も増えていくというあたりから、さらに物語に引き込まれました。

「家」は、海に浮かぶ巨大な「家」に住むある少年が主人公の物語です。舞台は非現実的なのですが、純文学的な雰囲気が良かったです。「純文学的」という言葉を私ははっきりした定義を知らないままに使ってしまっていますが、雰囲気の楽しめる話でした。

「空飛ぶ表具屋」は、現在の岡山県玉野市八浜出身の、浮田幸吉(1757-1847? Wikipedia参照)という歴史上の人物が主人公の物語です。彼は、鳥のように空を飛ぶことを夢見て、表具屋で身につけた技術で、空を飛ぶ道具の開発に情熱を注ぎ、ついには飛行を成功させた人物です。彼の生涯を、その飛行のための試行錯誤の過程とともに描きながら、ときおり、関連するような飛行機事故のエピソードが挿入されます。
 まず、浮田幸吉を主人公とする話自体が面白く(ときには、史料や学説の紹介もあります)、岡山県という地元(本編に登場するところは、どこもなじみ深い地名です)が前半の舞台ということで、嬉しかったです。そして、先にもふれた、時折挿入される飛行機事故のエピソードと、ラストの幸吉の言葉が印象的でした。

 表題作「将軍が目醒めた時」は、考えさせられる話でした。躁状態になり、自分が将軍だと思いこみ、精神病院に入院していた蘆原老人は、何十年もの躁状態からとつぜん目覚めます。大正という知らない年号に驚愕し、自分が入院していることにショックを受けますが、軍と院長の利害が一致し、しばらくこれまでのように将軍として振る舞ってほしいと言われます。正気に戻ってからも、狂気をもつふりをし続ける内に、疑問を覚える蘆原老人に、どこか感情移入しながら読み進めました。利権にしがみつく院長を批判する老人の主治医も、かなりテンション高いですが、言っていることには共感できる部分もありました。特に、院長を批判するのは良かったです。
 正気と狂気については、先日夢野久作さんの『ドグラ・マグラ』(記事はこちら)を読んだりして、あらためて考えさせられていたところなので、本作も興味深く読みました。






Last updated  2007.11.09 21:29:47
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