カテゴリ:本の感想(た行の作家)
筒井康隆『男たちのかいた絵』 ~新潮文庫、2006年36刷改版~ ヤクザが主人公の、短編集です。ヤクザたちが登場するということでは共通していますが、それぞれ独立した話なので、連作短編集ではありません。8つの物語が収録されています。 収録作品は次のとおりです。 ーーー 「夜も昼も」 「恋とは何でしょう」 「星屑」 「嘘は罪」 「アイス・クリーム」 「あなたと夜と音楽と」 「二人でお茶を」 「素敵なあなた」 ーーー タイトルはすべて綺麗ですが、中身はすごいです。楽天ブログの検閲にひっかかるようなキーワードもあるのであんまり書けませんが、たとえば、同性愛、嘘つきまくる男、二重人格、過剰な動物愛…。電車の友にしたのですが、特に最初の2話は、私は何を読んでいるのだろう、となりました…。 といって、そのようにうわぁと思いながら読む作品もあるのですが、面白いのです。筒井さんの作品にかなり魅了されてしまっているのはありますけれど、どの作品も面白いと思いながら読みました。よく、筒井さんの作品の解説に、「中毒」という言葉があるように思いますが、筒井作品にはある種の中毒性があると思います。 特に好きなのは、上に書いたようなどきついキーワードがあてはまらない、「アイス・クリーム」と、「あなたと夜と音楽と」です。 「アイス・クリーム」は、あえていえば父性の在り方について描いていると思うのですが(筒井作品をこのように単純化するのはおこがましい気もしますが)、主人公にとても共感できて、ラストにはやられました。 「あなたと夜と音楽と」は、音楽が好きなのにあまり得意ではないので、音楽学校に行ったことがない自分を悔やむヤクザが主人公です。彼は仲間たちとともに、あるアーティストやバンドの護衛につきます。バンドのメンバーに、あの曲は演奏するのか、音楽学校には行っていたのか、そんなことを聞きたいのに、自分がヤクザで怖がられているから、聞くに聞けない主人公。そして、いざというときにはバンドのメンバーをしっかり守ります。なんだか詩情もあって、素敵な物語でした。この主人公が一番かっこよかったです(笑) 23日の休日にはがさっと筒井さんの文庫を買いましたし、しばらく電車の時間が楽しみです。 (2008/09/24読了)
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Last updated
2008.09.26 06:43:03
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