カテゴリ:本の感想(た行の作家)
辻村深月『ロードムービー』 ~講談社、2008年~ 辻村深月さんの初の短編集です。デビュー作『冷たい校舎の時は止まる』のサイドストーリー集。 まずは、それぞれの内容紹介を簡単にしてから、感想を書きたいと思います。 ーーー 「ロードムービー」クラスで人気のあったトシは、いじめられていたワタルに好感を抱き、親しくなった。それから、いじめの標的はトシに移ってしまう。二学期にはいじめの中心的立場であるアカリが学級委員となり、トシは低学年の頃からの夢だった児童会長への思いもくじけそうになってしまう。 * 6年に進級する前の春休み。トシはワタルとともに、家出を決行する。 「道の先」塾の講師のアルバイトをしている俺は、一人の中学生に好意を寄せられる。気に入らない講師を次々と辞めさせたという、大宮千晶である。なにかを抱えて苦しんでいる彼女に、俺は自分自身も救われた言葉をかける。 「雪の降る道」親友が死んでから、ずっと熱を出して寝込んでいるヒロのところに、みーちゃんはいつもおみやげを持ってきてくれる。ヒロがいじわるを言って泣いてしまっても、彼女は翌日にはきっとおみやげを持ってきてくれた。しかしある日、ヒロがひどい言葉を言ってしまい、みーちゃんがいなくなってしまう。ヒロは必死に、死んでしまった親友に助けを求めながら、みーちゃんを探しに行く。 ーーー 苦しくもあり、温かい救いのある物語たち。『冷たい校舎の時は止まる』以来ずっと読んできていますが、辻村さんの作品は素敵だと思います。 『冷たい校舎の…』の内容を忘れてもいるので、本書の背景も分からない部分はありましたが、もちろんデビュー作を読んでいなくても楽しめると思います。 「ロードムービー」の演説シーンはとても素敵でした。「道の先」は、素敵な言葉に出会えて良かったです。そして「雪の降る道」は、本書の中ではいちばん泣いたように思います。 なお、本書には「辻村深月の本」という小さなリーフレットが挟み込まれています。こちらも素敵でした。なおその中で辻村さんは、『名前探しの放課後』について、第一期の総決算というようなことを書かれています。今回の短編集は、一つの折り返し地点、あるいは新しい出発点といったところでしょうか。また新しい物語に出会えるときを楽しみにしています。 (2008/11/02読了)
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Last updated
2008.11.05 06:42:52
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