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2008.11.06
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杉崎泰一郎『欧州百鬼夜行抄―「幻想」と「理性」のはざまの中世ヨーロッパ』
~原書房、2002年~

 杉崎先生は中央大学文学部教授で、主に中世における修道院の研究を進めておられます。私が所有しているもう一つの著作は、

杉崎泰一郎『12世紀の修道院と社会』原書房、1999年
 記事も書いていますが、また再読して書き直したいですね…。

 さて、本書の構成は次のとおりです。

ーーー
はじめに
第一章 怪人たち
 1 異境の怪人たち
 2 土着の民間信仰―巨人と小人
 3 社会の周縁に住む者―野人、狼人
 4 教会と怪人たち
第二章 怪獣たち
 1 教会に刻まれたもの
 2 文書に書かれたもの
 3 自然物や自然現象
第三章 ドラゴンと蛇
 1 動物神話の中のドラゴン(龍)と蛇
 2 聖人とドラゴン
 3 蛇女の伝説
 4 神話、英雄伝説
第四章 幽霊たち
 1 キリスト教布教の時代
 2 中世の死者祈祷と幽霊
 3 幽霊を科学する―ゴシックの時代
 4 幽霊の土俗化―中世末期
 5 幽霊の姿形
おわりに
ーーー

 本書も数年ぶりの再読ですが、この手のテーマを読むのもずいぶん懐かしいように思います。枕元の友にして、寝る前に少しずつ読み進めました。
 なお、第四章に関して、杉崎先生は次の論文を発表しています。
杉崎泰一郎「中世修道院の亡霊譚-死者が語る生者への教訓-」『西洋史学』183、1996年、19-34頁

 全体がですます体で書かれていて読みやすく、構成からもうかがえるとおり、読み物としてとても面白いです。ただそれだけでなくて、もちろん研究文献や一次史料が下敷きになっていて、深みもあります。普段は意識していませんでしたが、そういえばそうかと思った指摘を引いておきます。
また教会も民衆の慣習を弾圧する一方であったとは考えられません。中世の聖職者や修道士は妻帯しませんので、みな俗世で生まれ育ってから出家するわけですから、巷の価値観に無縁ではなかったはずです」(230頁)

 もう一点、怪物について興味深かった指摘を挙げておきます。それは、中世にはじめて登場する怪物の中には、写字生が字を写し間違えたり、間違えて翻訳したりしたことによって、普通の動物が怪物として書かれてしまった可能性があるという、ある研究者の指摘です。なかなか怪物の研究までは手がまわりませんが、こういう話を読むと興味深いですね。

 どの章も面白いのですが、特に興味深く読んだのは第三章です。その冒頭で、日本、中国、その他の文化圏の蛇に関する神話・伝承にふれているのですが、読みながらミシェル・パストゥロー氏による牛の象徴史に関する論考の冒頭を思い出しました。どの研究にもいえると思いますが、こうした比較研究―とまではいわなくても、中心に論じる地域とは異なる文化圏に目を配るのは重要ですね。
 また、その他の章についても、日本(史)との比較をする記述があり、興味深いです。

 次の枕元の友は、兼岩正夫『西洋中世の歴史家』にしようと思っていたのですが、これはノートをとりながら読むべきと考えたので、ジャン=クロード・シュミット『中世の迷信』を枕元の友にして久々に再読したいと思います。
(2008/11/02読了)


*訂正とお詫び
本書のメインタイトルは『欧州百鬼夜行抄』です。最初に記事をアップした際には、「抄」の字を書き忘れていました。タイトルを間違えるなんて…。帰宅後気付いてすぐに訂正しました。失礼いたしました。





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Last updated  2008.11.06 18:33:02
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