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2008.12.06
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筒井康隆『筒井順慶』
~角川文庫、1983年23版(1973年)~

 筒井康隆さんの短編集です。4編の作品が収録されています。
 それでは、それぞれについて簡単な内容紹介と感想を。

ーーー
「筒井順慶」筒井順慶の子孫かも知れないSF作家のおれは、編集者から筒井順慶について書かないかと依頼される。親戚や学者の助言を受け、歴史書や文献を漁り、実地に調べていくおれは、やがて「日和見」と批判される筒井順慶のひとつの真実を探り当てる。もちろんその中では、さまざまな苦難が…。
 これは面白いです。浅学ながら、筒井順慶という人物のことを知らなかったのですが、いろんな史料からその姿を構築していくのは面白いです。タイトルから、いわゆる普通の歴史小説かと想像していたのですが、「おれ」がいろんな体験をしながら調べごとをしていくスタイルで、楽しく読めました。ドタバタも良いですし、含蓄のある台詞もあって、良い読書体験でした。

「あらえっさっさ」花井プロ主催の芸能記者慰労大会は、毎度どんちゃん騒ぎとなる。そんな中、慰労大会に来られなかった人気女優・坂代リナのヴォイスがいなくなったというのだ。本部長の私はヴォイスを仕事につなぎとめるために行動を起こす。
 どんちゃん騒ぎの描写が面白く、一方、リナのヴォイスについてはよりシリアスなマスコミ批判といったところでしょうか。本体のリナと別に、歌担当のヴォイスがいるというのは、どこか最近のオリンピックを想起させるわけですが(といいながら私は一切オリンピックは見ていませんが…)、筒井さんの作品の先見の明といいますか、鋭さを感じますね。

「晋金太郎」人を三人殺してきた…そう言って、晋金太郎はテレビ局のディレクターをつとめるおれのところへ立てこもりにきた。取材させるために、と金太郎は言う。やって来た金太郎の恋人も母親も状況をおもしろがり、おれも彼を売りだそうとする。そしておれの家のまわりは、機動隊とマスコミが取り囲み…。
 こちらもマスコミ批判といいますか、大衆批判といいますか。こちらも、大きな事件で話題になった人が、あるいは一時有名になりながらすぐにテレビに出なくなるような人が、簡単に世間から忘れ去られてしまうという、風刺色の強い作品です。深いですね…。

「新宿祭」反権力運動が一大イベントとなった社会。おれの会社は、政治家などの依頼を受けて、大量の運動家を動員することを指摘していた。その大規模なイベント、「新宿祭」は、今年も激しい展開をたどる。
 こちらも面白いです。花火が打ち上げられたときに、「カク屋あ」「マル屋あ」と人々が声を上げるあたり、電車の中で笑いをこらえるのが大変でした。
ーーー

 と、面白い作品ばかりでした。
 先日の、「2008年11月の読書記録」の記事では、最近小説を読んでも印象に残らない、テンションが上がらないといったことを書きましたが、そんな中で読む筒井さんは格別です。ほぼ確実に楽しめます。
 もちろん、すでに何度か書いているように、筒井さんの作品にはどこか中毒性があって、私はしっかりそれにやられてしまっているからこそ、このように感じるのだと思うのですが。

(2008/12/04読了)





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Last updated  2008.12.06 06:24:15
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