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のぽねこミステリ館

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2009.11.24
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カテゴリ:おでかけ
 10月1日から11月30日まで、倉敷市主催で「巡・金田一耕助の小径」という企画が開かれています。金田一耕助さんの扮装をして、横溝さんの疎開先であり、また「本陣殺人事件」の舞台(のモデル)である真備町を散策したり、真備町にある「ふるさと歴史館」で、横溝さんの原稿などの特別展示が行われたりしています。

 11月23日(月、勤労感謝の日)は、くらしき作陽大学にて、『「巡・金田一耕助の小径」特別講演会』が開催されました。私ははかまなど、金田一さんの扮装ができるアイテムを持っていないので、散策には参加しなかったのですが、こちらの講演会を聞きに行ってきました。

 まず、探偵小説研究家の浜田知明先生が、「横溝正史と岡山」というテーマで講演をされました。
「本陣殺人事件」は、日本初の長編本格探偵小説とされます。この作品が生まれた背景として、横溝さんが当時岡山県の真備町に疎開されていたことがあるのですが、あらためてその疎開の経験と本格探偵小説の誕生を関連づけたお話でした。
 特に興味深いのは、神戸や東京という都会ではなく、岡山のいなかの地に疎開して住んだからこそ、日本的な「家柄」や共同体の閉鎖性にふれることができ、そしてそれを探偵小説を描く上での大きな「武器」とされた、ということです。「本陣殺人事件」の密室は、日本家屋を使った初の密室という指摘もあるそうですが、日本的な家柄が背景として描かれており、まさにこの作品は「日本的長編本格探偵小説」だったということになります。

 次いで、「横溝正史研究について」というテーマでパネルディスカッションが行われました。
 3人のパネラーの方々が、それぞれのテーマにもとづいて報告をされたのですが、そのことも簡単に書いておきます。

 まずお一人目は、二松学舎大学教授の山口直孝先生です。先生は、「文学研究」の立場からお話をされました。
 横溝正史さん、あるいは探偵小説、ミステリーといった「大衆文学」を研究するうえで、書かれたものだけに限られない、映画・アニメなどの近隣領域の調査も総合的に行っていき、文化現象として分析していくことの重要性を指摘していらっしゃいました。
 この点で一点だけ気になったのは、大衆文学の読者、あるいはそれにまつわる文化現象には、それを研究する研究者自身も含まれているのではないかということです。たとえば、私が横溝正史さんの研究を、ファンの行動なども含めた文化現象として研究しようとしたとき、私自身もファンの一人であり、そうすると私自身も研究対象になってしまっているのではないか、ということ。
 私は西洋中世史を専門に勉強しています。もちろん、自分自身の興味関心が研究の出発点にあるとはいえ、自分自身と研究対象である西洋中世とは、自分が比較的客観的な立場に立ちうるだけの距離があると思います。ところが、自分自身も研究対象に含まれるような大衆文学の文化現象としての分析は、研究対象と自分との距離があまりに近い、そうすると客観的な立場も比較的とりにくいのではないか、と思うのですね。このあたりの方法論的な問題についてはどのような議論があるのか、というのが気になりました(横溝正史研究という今回の発表テーマとは趣旨がずれてしまっていますけれど…)。

 お二人目は、青山融先生。青山先生は、お声をうかがって気付いたのですが、山陽放送ラジオでしばしば岡山弁講座をしていらっしゃる方ですね。気付いて相当テンション上がりました。
 そんな青山先生は、岡山弁という観点から、横溝さんの作品を読み直すという興味深い指摘をされました。具体的には、岡山を舞台にした金田一耕助シリーズの6つの長編(「本陣殺人事件」『獄門島』『夜歩く』『八つ墓村』『悪魔の手毬唄』『悪霊島』)の登場人物たちが、どれだけ岡山弁を使っているか、ということ。どれも岡山が舞台でありながら(『夜歩く』は後半のみですが)、しっかり岡山弁が描かれているのは『悪魔の手毬唄』のみなのです。
 私も、『悪魔の手毬唄』を読んでいて、そうとう岡山弁が使われているなぁと思っていたのですが(「どげえもこげえもありゃせんがな」やら、「いうてみい、いうてみい」「いうたらあ、いうたらあ」やら…)、まさに地の文でも、横溝さんが方言についてしっかり言及されているというご指摘が興味深かったです。なるほど…。
 また青山先生は、頭に懐中電灯をつけるときの正しい付け方を教えてくださったり、『悪魔の手毬唄』の「手毬唄」をいろんな映画のバージョンや、その手毬唄の元になったと思われる手毬唄を聞かせてくださったりと、とても楽しくお話を拝聴できました。

 お三人目の網本善光先生は、空間という観点から横溝作品の分析をされました。具体的には、「本陣殺人事件」で描かれた場所と、実際の岡田村にどれだけ共通点があり、またどこからが作品のフィクションになっているか、という指摘をなされ、とても興味深かったです。また、今回の「巡・金田一耕助の小径」の企画の中で、「本陣殺人事件」トリックの再現もされたそうですが、あれ、うまくできるそうですね。そして、あのトリックが実現可能だと実際に試されたこともふまえ、逆にあのトリックを綿密に作品の中に描きこみ、読者にもそのトリックで納得させるという横溝さんの筆力や想像力のすごさを指摘していらっしゃって、あらためて横溝さんのすごさを感じました。

 昨日は『八つ墓村』の感想の記事をアップしましたし、明日以降も2作、横溝作品の記事をアップする予定ですが、この講演会に参加するのに復習(?)をしておこうと思って、それらの作品を再読したのでした。実際に読んで横溝さんのすごさにふれて、また実際に専門的に横溝さんの作品を研究していらっしゃる方々のご報告を聞くことで横溝さんのすごさを感じて… とても良い体験でした。

 また横溝さんや横溝作品ゆかりの地へ足を運んでみたいと思っています。
 あらためて、素敵な講演会でした。






Last updated  2009.11.24 06:55:03
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