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2010.01.09
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森本英夫訳編『フランス中世艶笑譚』
~教養文庫、1984年~

 12世紀から14世紀にかけて、ファブリオというジャンルの作品がさかんに作られました。本書解説による定義は、「現実的主題を扱い、愚かしい行為や出来事を笑いの種にした笑い話」です。本書は、中世フランスで作られたファブリオのうち、「男と女の浮き世話」を集めています。
 本書の構成は、以下のとおりです(部やそれぞれの話の連番は、便宜的に付しました)。

ーーー
第1部 浮気の結末
 1.戸棚に入れられた司祭の話
 2.石を蹴ろうとした男の話
 3.恋人を風呂桶に隠した女房の話
 4.出歯亀司祭の話
 5.ぼろ屑からとび出した小鼠の話
 6.悪魔の使いエストルミーの話
 7.お蔵番修道士の話
第2部 夫婦の味
 1.十二人の女房を欲しがった若者の話
 2.ポン・シュル・セーヌの漁師の話
 3.黒いふぐりの話
第3部 女の口説き方
 1.アルルーの粉屋の話
 2.司祭と情婦アリソンの話
 3.鷹を手に入れた騎士の話
 4.騎士に仕返しした女の話
第4部 娘の教育
 1.あの話を聞くと胸の悪くなる娘の話
 2.元気百倍のリスの話
第5部 馬鹿話
 1.男性自身を拾った三人の婦人の話
 2.娘のもつ、も一つの口の話
 3.伯爵の指輪を見つけた三人の女の話
 4.修道士の夢
 5.女の局所に祝福を与えた司教様の話
 6.女の局所に話をさせる騎士の話
 7.百人の騎士に愛の奉仕をした女の話

解説
ーーー

 本書のタイトルからも想像がつくでしょうし、またいくつかのタイトルの標題にもあるとおり、下ネタ満載の物語たちです。ふだんは聖書や教父たちを数多く引用した説教や説教手引書ジャンルの史料を読んでいるので、これらの史料はなかなか新鮮でした。
 記事の冒頭にはややかたいことも書きましたが、そんなこと抜きに笑える話ばかりです。
 司祭や修道士といった、聖職者たちが風刺の対象となる話が多いですね。もちろん、寝取られ夫や女の悪さといった、よくあるテーマの話も多いです。

 ファブリオには、聖職者や騎士のような、上の方の社会階層ばかりでなく、漁師、農民などなど、いろんな階層の人々が生き生きと描かれます(どこまで現実の状況なのか判断しかねるのが難しいところですが)。ところが、これらの物語を作ったのは、当然読み書きできる聖職者たちが中心で、物語を聴いていたのも、宮廷文学を聴いていた人々と同じだろうと森本先生は書かれています。
 当然ファブリオの研究も進んでいるでしょうが、気になることがたくさん出てきました。
・これらの話が同時代に果たした機能は?
、・いかに作られいかに受容されたかという問題
・やたら、「聖○○に誓って」という誓いの言葉が出てきますが、私が勉強していたある説教師の例話(説教を分かりやすくするための小話)には、やたら誓ってはいけないよと聖職者に叱られる女性が登場します。誓いのパロディとして、ファブリオではやたら誓う人が登場するのでしょうか。
・誓いに関連して、「キリストの尻に誓って」などというとんでもない誓いの言葉もあるのですが、同時代の聖職者たちはこういう物語をどう思っていたのでしょうか。
 勉強してみたいことは尽きないですね。

 面白い一冊でした。

(2010/01/02読了)





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Last updated  2010.01.09 07:47:32
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