カテゴリ:本の感想(海外の作家)
リヒャルト・レアンダー(国松孝二訳)『ふしぎなオルガン』 (Richard Leander, Traumereien an Franzosischen Kaminen, 1871) ~岩波少年文庫、1952年(新版2010年)~ リヒャルト・レアンダー(本名リヒャルト・フォン・フォルクマン、1830-1889)が、戦地から故郷ドイツの子どもたちに書き送った物語がもとになった創作童話、20編が収録された1冊です。 全てのお話について感想を書くとあんまり長くなってしまうので、全体の目次をかかげた上で、特に印象に残った物語について感想を書きたいと思います。 ーーー ふしぎなオルガン こがねちゃん 見えない王国 悪魔が聖水のなかに落ちた話 錆びた騎士 コショウ菓子の焼けないおきさきと口琴のひけない王さまの話 魔法の指輪 ガラスの心臓を持った三人の姉妹 子どもの話 ゼップのよめえらび 沼のなかのハイノ 不幸鳥と幸福姫 若返りの臼 カタカタコウノトリの話 クリストフとベルベルとが、じぶんから望んでひっきりなしにゆきちがいになった話 夢のブナの木 小鳥の子 天の音楽 天国と地獄 古いトランク 訳者あとがき ーーー どの物語もとても素敵でした。本書をすすめてくださったtorezuさん、ありがとうございました。 なんといっても表題作の「ふしぎなオルガン」は良かったです。 腕の良いオルガン作りが最後につくったのはとてもふしぎで、神の思し召しにかなった花よめ花むこが教会に入ってくると、ひとりでになり出すというオルガンでした。その後、オルガン作りは土地で一ばんきれいな娘と結婚しますが、すでに彼はうぬぼれてしまっていて、花よめと一緒に教会に入ってもそのオルガンは鳴りませんでした。男は、オルガンが鳴らなかったのは花嫁のせいだと思い、荷物をまとめて飛び出してしまいます。そして、長年の放浪生活を終えて故郷に戻ってくると…。 余韻の残る、素敵な物語です。 「錆びた騎士」は、貧乏な人たちにいばりちらしていたので、神様が罰として体の半分を錆びさせてしまった騎士が主人公です。騎士は、錆びてから心をいれかえて、信心深い女性をお嫁さんにもらいました。しかし、すぐにすぐに錆びは治りません。騎士の体が錆びているのに気付いたお嫁さんは、えらい隠者に受けたアドバイスによって、乞食をするようにします。そんなある日、乞食をしている彼女のもとへ夫の騎士がやって来て…。 自分のうぬぼれから罰を受けた男が主人公ということで、表題作と通じるところもありますが、こちらも素敵なラストでした。 「魔法の指輪」も良かったです。魔女の言葉で、たった一度だけですがなんでも願いの叶う指輪を手に入れた一人の若い百姓がいました。ところがこの百姓、手に入れたそばから、人にだまされて、その指輪をとられてしまいます。 ところが、百姓にとっては、やっぱりそれは魔法の指輪だったのです。この童話集には珍しく、さいごに教訓のような一文がありますが、まったくもって共感ができました。お気に入りの物語の一つです。 「天の音楽」も素敵な物語でした。天と地上が開かれていた頃、天の音楽が地上のみんなにも聞こえていて、それはふしぎな心になれたそうです。ところが、天が閉ざされ、天の音楽の楽譜がちりぢりに地上にばらまかれてしまうと、地上の人々は自分が手に入れた切れ端が一番価値があるといって、いがみあってしまいます。そして、ふたたび天が開かれる、最後の審判の日には…。 最後の一文に思わず強くうなづいてしまいました。 というんで、素敵な童話集でした。 (2010/09/18読了)
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