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2012.09.09
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北村薫『朝霧』
~創元推理文庫、2004年~


「円紫さんと私」シリーズ第5弾。ついに私は学生生活を終え、編集者として社会人生活を送るようになります。そんな私が経験する日常の謎にまつわる、3編の中編が収録された作品集です。
 それでは、簡単に内容紹介と感想を。

ーーー
「山眠る」
 『六の宮の姫君』の件でお世話になった小説家のもとへ、編集者の天城に連れられて行った私は、そこで俳句に関する話をする。そのなかで思い出したのが、小学生の頃の同級生の父親。いま、私の母校の校長であるというその人物は、地域の俳句サークルで教えていた。しかし、彼は俳句をやめるといったという。さらに、地元の本屋で働く同級生は、校長が、春本を大量に買っていったという、心のもやもやを私に打ち明け…。

「走り来るもの」
 私は大学を卒業し、在学中からアルバイトをしていたみさき書房に就職した。
 先輩である天城さんと、リドル・ストーリー(起承転結の「結」を示さず、ことさら読者に委ねるジャンル)の代表作である、『女か虎か』の話になった。話の流れで、天城さんは、親しくしている取引先の人物が書いたリドル・ストーリー、「走り来るもの」という物語を紹介してくれる。三角関係にあったうちの一人が、妻の心を取り戻すため、ライオンとの戦いに挑む。はたして、彼は、拳銃の引き金を引いたのか―。

「朝霧」
 以前見つけた、曾祖父による『グリム童話』の翻訳が面白かったため、同じく読書好きだったという祖父に関心を持った私は、祖父の日記があることを知り、読み始める。そのなかに、祖父の下宿先の娘さんが祖父に出した、判じ物が記録されていた。果たして、その意味は―。円紫に相談するも、謎を明かした円紫は、真相を私に伝えない。それは、私自身が理解する必要があるためだという。
ーーー

 謎解きが面白いのはもちろん、味わいの深い物語たちです。
「山眠る」では、雪の日に「私」が思い出す、郵便局でのお父さんとの思い出が、とても印象的でした。ふっと挟まれた挿話なのですが、素敵な1シーンです。
 また、「山眠る」でも、「朝霧」でも、「私」の先祖が残した記録が、直接謎解きにからむにしろ、物語に深みをもたせるにしろ、とても印象的です。「私」の家系は、代々読書好きのようですが、世代をとびこえた対話が、描かれているように思います。なんというか、素敵だなぁ、と思います。
 本書で、「私」は大学を卒業し、社会人になります。
『空飛ぶ馬』以降に描かれたエピソードは、彼女の記憶であり、私たちもそのエピソードを知っている分、シリーズを通じた時間の流れを感じます。
 素敵な一冊です。






Last updated  2012.09.09 20:41:04
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