カテゴリ:本の感想(ま行の作家)
松尾由美『九月の恋と出会うまで』 ~新潮文庫、2009年~ 新潮文庫では、『雨恋』に続く作品です。表紙の感じも、内容も、どことなく似たような世界観で、そしてその感じは大好きなので、とても面白く読みました。 それでは、簡単に内容紹介と感想を。 ーーー 写真が趣味の、わたしこと北村詩織は、現像液のにおいのことでアパートの住民から苦情を言われていた。そんななか、雑貨店で見つけたぬいぐるみの熊が、「引っ越しちゃえば」と言っているように思えて…。 そして、なんらかの芸術活動をしていることが条件となっているアパートに入ることになる。快適だったアパートの部屋だが、ある日、エアコンのホースを通すための穴から、声が聞こえた。声は、穴とは逆側の部屋に住んでいる平野で、1年後から声を届けているという。一週間分の新聞の見出しを読むことで、未来からの声ということは納得したものの、詩織の聞き間違いから、シラノと呼ばれるようになるその声の持ち主は、奇妙な依頼を持ちかける。それは、詩織の定休日の水曜日に、平野を尾行してほしいという依頼だった。奇妙な依頼に応じるなか、その目的を話してくれる約束の日から、急に声が聞こえなくなり…。 詩織は、平野とともに、シラノの正体を探ろうとし始める。 ーーー あらためて、これは面白かったです。 松尾由美さんの作品は、安楽椅子が探偵だったり、幽霊がアドバイスをしてくれたりと、不思議な設定が特徴ですが、本書でも、未来からの声と、それによる過去の改変(?)という、SFにつきもののテーマがひとつの主題となっています。最近、広瀬正さんの作品を読んだりして、SFにふれていたので、このテーマについて、こういう解決があるのかと、いっそう興味深く読めたように思います。 もうひとつのテーマは、タイトルにもある「恋」なのですが、こちらも素敵でした。 良い読書体験でした。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2012.11.23 21:35:27
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