のぽねこミステリ館

2012/12/22(土)22:39

氷川透『真っ暗な夜明け』

本の感想(は行の作家)(39)

氷川透『真っ暗な夜明け』 ~講談社ノベルス、2000年~  第15回メフィスト賞受賞作。氷川透さんのデビュー作です。  それでは、簡単に内容紹介と感想を。 ーーー  学生時代のバンド仲間たちが久々に集まった。解散し、駅で終電を待っている中、トイレの中で、仲間たちのリーダーである和泉が撲殺されているのが見つかった。  改札そばにいた氷川透は、バンドメンバー以外に改札を通った人がいないことを把握していた。犯人は、自分たちの中にいる…。  しかし、現場にはいくつかの不審な点があった。凶器とされたのは、飾りの像の台座だったが、なぜ犯人は像の方ではなく、台座の方を使ったのか。  警察と連絡を取りつつ、事件について考察を進めるさなか、さらに仲間の一人がマンションから墜落死する。  はたして、事件の真相は…? ーーー  最近紹介した『各務原氏の逆説』と同シリーズ第2弾『各務原氏の逆説 見えない人影』が、いろいろと論理的に甘いところがあったり、真相もはて??と思わされるところがあったのに対して、本作はまさに理詰めの作品。といっても、氷川さんが(わかりにくい?)冗談を言ったりするので会話の方も楽しく、謎解きも十分に楽しめる作品だと思います。  また本作で面白かったのは、作中の氷川さんが問題としている「物語の進行における視点の問題」が、作品の構成としても意識されていること。節ごとに視点の中心となる人物が変わるのですが、恥ずかしながら、私には本作におけるその効果について論じることはできません。ただ、物語のなかの視点の問題というのは、ずっと以前から興味をもっていたことなので、あらためて意識するきっかけになりました。

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