カテゴリ:本の感想(や・ら・わ行の作家)
山田詠美『快楽の動詞』 ~文春文庫、1997年~ 『筒井康隆の文芸時評』を読んで気になっていた作品「逆説がお好み」を含む8編の小説が収録された作品集です。エッセイ風の作品から、批評的な作品まで、解説の言葉を借りればとりあえず「文章」としか呼べないような作品群です。けれどそういったジャンル分けはともかく、面白いです。 表題作「快楽の動詞」は、「どこそこへ」という目的語が不要な「いく」と、「死ぬ」という言葉のもう一つの使い方について。まさに「快楽の動詞」ですね。エッセイ風で、考察がとても面白いです。 「否定形の肯定」は、特に楽しめた一編です。言葉をそのまま受け取る、「すきっと、さわやか」な三郎くんを登場させて、「否定形の肯定」にまつわるすれ違いを描いています。 「駄洒落の功罪」は、徹底的に駄洒落を忌み嫌い、駄洒落へのテロ活動を行う女子高生の話です。 「逆説がお好み」は、ミーハーで知的な男性と付き合いたいと言っている女性が、作家と付き合うため、いろんな物語を読んで、なにやら誤解していく(?)話でした。こちらも面白かったです。 「文体同窓会」では、いろんな文体が集まります。自分ばっかり見ている美文の文体や、かたゆで卵ばかり食べる男の文体などが登場、主人公の文体たちが彼らをいろいろ評価する、という話。 続く「口の増減」は、雑誌に友達募集の記事をのせたふえず口に、へらず口から手紙が届いて…というお話。なんとかへらず口を目指そうとするふえず口ですが…。 「ベッドの創作」は、男性とベッドにいる女性が、その情景を2つのパターンで小説化して、善し悪しを考えるというお話。そのギャップが笑えます。 「不治の快楽」では、「蛾万」と「浮良地」の論戦から始まり、「蛾万」側が快楽禁止令について発表して…というお話。いわゆる堅い文章の「蛾万」と、バトルを必要としない「浮良地」のギャップ、快楽禁止令を知ったヨイヨイやイクイクたちの慌てぶりなど、こちらも大いに笑えました。 なかなか、ふだん読まないタイプの作品ですが、面白かったです。そしてあらためて、こういう本に出会うきっかけとなった『筒井康隆の文芸時評』のような、読書案内本も良いなぁと感じます。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2013.01.13 16:24:48
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