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のぽねこミステリ館

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2013.04.06
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高木彬光『わが一高時代の犯罪』
~角川文庫、1976年~


 中編の表題作の他、4編の短編が収録された、神津恭介シリーズの作品集です。
 それぞれについて、簡単にコメントを。

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「わが一高時代の犯罪」
 とても面白かったです。時計塔からの人間消失という魅惑的な謎の提示ももちろんですが、物語の雰囲気が抜群です。松下研三さんが一高(東京大学教養学部の前身)に入学し、神津恭介さんと出会い、その最初の活躍を目の当たりにするのですが、学生らしさが随所に描かれているのが印象的でした。松下さん自身は、ウルトラスーパーという渾名(その理由も面白いです)ですし、その他主要な登場人物は、むずかしい哲学書ばかり読んでは、寝言にもショーペンハウエルの名が出るというフラテン、同時に七人の恋人をもつといわれる青髭、麩を常食にし、西式健康法の医学的に究明しようとする西式と、とてもバラエティに富んでいます。自分自身がこんな学生生活を送ったわけではないですが、なんだか懐かしい感じがしました。
 この中の一人を訪ねてきた謎の女、その後の学生の失踪、そして死……。裏には、さらに深い問題も隠されていました。
 以前読んだ『人形はなぜ殺される』も面白かったですが、本作も負けず劣らず面白いです。
 読む前は、タイトルがあまり好きではありませんでしたが、読了してみると、このタイトルしかない、と感じました。抜群の作品だと思います。

「幽霊の顔」
 戦死したはずの男を呼び戻す、証拠として写真に男を写そう…。そういう霊媒師のトリックを暴くべく、旧家を訪れた松下さんですが、本当に写真に男が写され、慌ててしまいます。そして、神津さんに助けを求める…という話。
 こちらは殺人事件がからまない物語です。

「月世界の女」
 休養のため、あるホテルに泊まった松下さんは、自分は月の世界で生まれた、まもなく月に帰らなければならない…という話をする女と出会います。はじめて会ったときは、その美貌に心惹かれた松原さんですが、その発言を不思議に思います。さらに、彼女の愛を得ようとする3人の男たちがホテルにやってきます。そして、密室状況からの女の失踪事件が起こり…。
 こちらも殺人事件のからまない物語です。これは好きなテイストの話でした。

「性痴」
 神津恭介さんが飛行機で隣り合った女は、神津さんに、10年前に死んだ夫が生きている節がある…という不思議な話をします。気にかけていた神津さんですが、その女との面会の日、女は殺されてしまいます。その女、多くの男たちと関係を持っていたようで…。
 被害者の女性が、音痴ならぬ性痴という性格で、それがうまく活きた物語でした。

「鼠の贄」
 本書の中で、表題作に次いで面白いと感じた作品です。松下さんの友人が、異常なまでに鼠に恐怖を感じていました。その男の手記には、妻には見えない鼠が自分には見える、妻たちに鼠を喰わされた…など、おぞましい描写も含めた、恐怖がつづられています。
 奇妙な手記ということで、島田荘司さんの『眩暈』などが連想されました(内容は全く違いますが)。そしてこのような、一見現実的でない奇妙な手記が提示され、それが現実的な解決をみる、という物語が好みでもあり、また本書の解決もとても面白く、私には好きな作品でした。
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 あらためて、高木彬光さんの作品を読むようになって良かったと思いました。特に表題作は抜群に面白かったです。良い読書体験でした。






Last updated  2013.04.06 20:46:52
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