カテゴリ:本の感想(や・ら・わ行の作家)
米澤穂信『儚い羊たちの祝宴』 ~新潮文庫、2011年~ 米澤穂信さんによる、ノンシリーズの短編集です。 大学の読書サークル「バベルの会」の関係者に起こる出来事を描きます。 簡単に内容紹介と感想を。 ――― 「身内に不幸がありまして」孤児院を出て、ある邸宅に奉公することになった夕日は、お嬢様の吹子と一つの秘密を共有していた。それは、吹子が書斎に作らせた秘密の書棚にある本を共有すること……。本好きの吹子は、大学生になり、「バベルの会」という読書サークルに所属することになる。その合宿が近づいてきた頃、大きな事件が起こる。 「北の館の罪人」母親を亡くし、言われた邸宅を訪ねたあまりは、「北の館」と呼ばれる館に半ば幽閉される。その館に住む早太郎を、決して外に出さないという任務とともに。ある日から、早太郎から買い物を依頼されるようになる。依頼されるものは、なんとも意味不明なものばかりだが…。 「山荘秘聞」家政婦としての能力に自信をもつ屋島は、富裕者の別荘の管理を一任することになった。毎日毎日、きれいに手入れをしていたが、彼女は奇妙なことに気づく。丸一年、一切誰も別荘を利用しなかったのだ。そんな中、一人の遭難者を発見し……。 「玉野五十鈴の誉れ」厳しい祖母に育てられている純香が15歳になったとき、一人の使用人を与えられた。それが、玉野五十鈴だった。祖母の呪縛から逃れ、彼女と過ごしているときに幸せを感じていた純香だが、家を出た大学時代に、事態は暗転し…。 「儚い羊たちの晩餐」贅を尽くす料理人を雇った成金の父だが、しかし料理人の様子はあまりにもおかしかった。わずかな料理しか作っていないはずなのに、請求書に記された材料は膨大だった。そしてわたし自身は、父のせいもあり、所属している「バベルの会」を脱会せざるをえない事態になり…。 ――― ブラックな味わいの短編集です。背表紙の紹介をみてみると、「米澤流暗黒ミステリの真骨頂」とありますが、納得です。 特に「玉野五十鈴の誉れ」は、主人公の祖母のあり方に気持ち悪くなりました。 とはいえ、面白いです。どれも、ラストに衝撃が待つ、というコンセプトですが、特に面白かったのは「北の館の罪人」です。「北の罪人」が何をしようとしていたのか、そして最後に待つ真相は、後味はよくありませんが、大好きな趣向です。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2015.07.11 23:04:07
コメント(0) | コメントを書く
[本の感想(や・ら・わ行の作家)] カテゴリの最新記事
|
|