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2016.04.27
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ニコル・ベリウ/デイヴィッド・L・ダヴレイ『中世説教に関する現代的諸問題―結婚、死、歴史、聖性についての論集―』

Nicole Bériou and David L. d'Avray, Modern Questions about Medieval Sermons. Essays of Marriage, Death, History and Sanctity, Spoleto, 1994

 西洋中世説教に関する論文集です。編者のベリウは、リュミエール・リヨン第2大学の教授で、著書に1000頁近いL'avènement des maîtres de la Parole. La prédication à Paris au XIIIe siècle, Paris, Institut d'études jaugustiniennes, 1998, 2 volがあります。もう一人のダヴレイについては、範例説教集の重要性を示し、中世の説教=中世におけるマスメディアという議論を展開した、中世説教研究のなかでは非常に有名な著作であるD. L. d'Avray, The Preaching of the Friars. Sermons diffused from Paris before 1300, Oxford, 1985があります。
 本書の構成は次のとおりです(タイトルは拙訳)。

―――
序論

1.中世説教研究の方法(D. L. d’Avray)
2.13世紀フランスにおける理想の夫のイメージ(N. Beriou & D. L. d’Avray)
3.ドミニコ会士アンリ・ド・プロヴァンスによるドミニコ会及びフランシスコ会と結婚の「修道会」との比較(N. Beriou & D. L. d’Avray)
4.盛期中世の「身分別」説教集における結婚説教(D. L. d’Avray & M. Tauche)
5.カナの婚礼の福音とフランスにおける結婚説教(D. L. d’Avray)
6.身体に関するフランシスコ会士の思想(D. L. d’Avray)
7.1350年以前の故人に関する説教(D. L. d’Avray)
8.追悼説教の比較研究(D. L. d’Avray)
9.最近の出来事への神学の適用―マンスーラの死者とインノケンティウス4世に関する追悼説教―(P. Cole, D. L. d’Avray and J. Riley-Smith)
10.もう一人の托鉢修道士と古代(D. L. d’Avray)
11.あるフランシスコ会士と歴史(D. L. d’Avray)
12.聖フランチェスコ、13世紀説教におけるその修道会の最初の預言者(N. Beriou)
13.ラヌルフ・ド・ラ・ウブロニエールの説教活動における聖人と聖性(N. Beriou)
14.13世紀パリでの説教におけるマグダラのマリア(N. Beriou)
15.アレクサンドリアのカタリーナとドイツにおけるマス・コミュニケーション―知識人としての女性―(D. L. d’Avray)
―――

 第1論文と第15論文は今回が初収録、それ以外はなんらかの媒体に発表された論文となっています。なお、ベリウによる第12~14論文は仏語、それ以外は英語です。

 第1論文で方法論を展開した後、第2~5論文が結婚を、第6~9論文が死を、第10~11論文が歴史を、第12~15論文が聖性をテーマにして、説教史料を分析します。

 第1論文で提唱される中で、本論集でもダヴレイが中心に実践している方法として、比較の方法(例:第5,8論文)や文学的アプローチ(例:第7~8論文)があります。後者の文学的アプローチは、私には難しく、なんともいえません。一方、たとえば13世紀と17世紀の結婚説教を比較することで、違いが浮かび上がれば、そのあいだになんらかの変化があったのだ、ということは言えるわけで、比較の方法の重要性はわかりやすかったです。

 以下、簡単に興味深かった点をメモしておきます。

 第2論文は、大学院の頃に同期に面白そうと言われながらも、すぐに読めず紹介できなかったという苦い思い出があります。キリストのあり方と、理想の夫のあり方を対比するという説教の紹介で、説教の分析のみならず同時代の騎士道文学作品との比較もあり、興味深い議論でした。

 第4論文は、「身分別説教集」の分析に正面からとりくんだ(おそらく)最初期の論文で、本論(初出1980年)以降に「身分別説教集」を扱っている論文や著作ではほぼ引用されています。恥ずかしながら通読したのは今回が初ですが、結婚生活のあり方について説教の中でどのように語られているか、具体的に論じられます。

 第5論文は、序盤に結婚説教にみられるトポス(定型表現)が整理されていて便利です。

 第10論文は、古代(の哲学者=「異教徒」)を非常に高く評価しているフランシスコ会士の史料の紹介で、とても興味深く読みました。その史料では、古代の哲学者≒修道会、という図式が示されているそうです。さらにいえば、本書第3・5論文では結婚生活≒修道会という見方があったことが示されていて、つまり西洋中世では修道会はいろんな人々・生活のたとえになりえたということなのでしょう。このことに気づけただけでも、本論集を通読して良かったと思います。

 マグダラのマリアが説教の中でどう描かれているかを論じた第14章も、ざっと眺めた程度ですが、興味深いです。

 入手してから時間が経ってしまいましたが、今回ざっとでも通読できて良かったです。






Last updated  2016.04.27 22:08:54
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