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2016.12.10
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  • Medieval Monastic Preaching.jpg

Carolyn Muessig (ed.), Medieval Monastic Preaching, Brill, 1998

 今回は、修道院内での説教活動や説教から見る修道院(修道会)像などについての研究をまとめた論文集を紹介します。
 編者のキャロラン・ムエシックはブリストル大学の中世宗教学教授。本書の他に、私の手元には
・Carolyn Muessig (ed.), Preacher, Sermon and Audience in the Middle Ages, Brill, 2002
 という論文集があります。
 またムエシックの論文を収録した論文集として、既に紹介した
Jacqueline Hamesse et Xavier Hermand (eds.), De l’homelie au sermon. Histoire de la predication medievale, Louvain-la-Neuve, 1993
Jacqueline Hamesse, Beverly Mayne Kienzle, Debra L. Stoudt, Anne T. Thayer (eds.), Medieval Sermons and Society : Cloister, City, University, Louvain-la-Neuve, 1998
があります。
本書の構成は次のとおりです(タイトル拙訳。また論文連番はのぽねこ)。

―――
前書き
謝辞
執筆者一覧
略号

第1部 序論
[1]中世修道院説教とは何か?―ひとつの序論―(Carolyn Muessig)

第2部 カルトゥジオ会士の説教活動
[2]カルトゥジオ会士ドニはなぜ「俗人への説教Sermones ad Saeculares」を書いたのか?(Denys Turner)
[3]「曙のように強く輝く」―ジャン・ジェルソンによるカルトゥジオ会士への説教(Brian Patrick McGuire)
[4]マインツのチャプターハウスでの初期15世紀におけるチャプターハウス説教(James Hogg)

第3部 ドイツ及びイングランドにおける「修道女の世話cura monialium」
[5]ドミニコ会厳格派運動の修道女への説教(Regina D. Schiwer)
[6]後期中世イングランドにおける修道女への説教活動(V. M. O’Mara)

第4部 イタリアの修道女と隠修士による説教活動
[7]ファエンツァのウミルタの『伝記Vitae』と説教における権威と霊感(Catherine M. Mooney)
[8]イタリアの隠修士による説教活動(George Ferzoco)

第5部 カタリ派による説教活動/カタリ派に対する説教活動
[9]主のぶどう畑を守る―ビンゲンのヒルデガルドによる対カタリ派説教活動(Beverly Mayne Kienzle)
[10]カタリ派の説教活動(John Arnold)

第6部 修道院改革に関する説教活動
 [11]第四回ラテラノ公会議後の世界における修道士の役割―ジャック・ド・ヴィトリの『身分別説教集Sermones ad Status』と『西方の歴史Historia Occidentalis』(Jessalynn Bird)
 [12]修道院の理想と司教訪問―ロバート・グロステストの『修道士への説教Sermo ad Religiosos』(James R. Ginther)

第7部 イングランドにおけるベネディクト会の説教活動
 [13]ベネディクト会の説教―イングランドの修道院聖堂回廊[Monastic Cahedral Cloisters]における準備と実践(Joan Greatrex)
 [14]後期中世イングランドにおけるベネディクト会士と「司牧」に関する説教活動―ひとつの予備的調査(Patrick J. Horner)

第8部 シトー会士の説教活動
 [15]雅歌についての聖ベルナールによる説教は実際に説教されたのか?(Christopher Holdsworth)
 [16]時間を殺す―速さに関する修道院的概念に関する一考察(M. B. Pranger)
 [17]12世紀シトー会士による説教活動の典礼的側面(Chrysogonus Waddell)

総索引
―――

 以下、簡単にメモしておきます。
 [1]は、本書所収の諸論文の簡潔な要約をしつつ、修道院(修道士)と説教の関係の概要を提示します。

 第2部は、瞑想的な生活に重点を置いたカルトゥジオ会の説教を考察します。[2]は、なぜそんなカルトゥジオ会士の一人であったドニという人物が俗人向け説教を著したかを考察し、彼は同会の伝統的な瞑想と活動の区分を拒み、説教活動の中に瞑想も含まれ得ると考えていたことを指摘する興味深い論考です。またドニが、「身分別ad status」の考察を残していることも興味深いです。[3]はカルトゥジオ会士に向けた神学者ジャン・ジェルソンの説教の詳細な分析。[4]では、同会の規則から同会での説教の位置づけを抽出する部分が興味深いです。修道院外での説教を禁ずる規則が何度も出されていることを見ると、逆に修道院外での説教が実際には行われていたということでしょうね。

 第3部は修道女に宛てられた説教の分析となっています。[7]は女性修道院長を務めたウミルタ自身の説教と彼女の『伝記』を比較検討し、男性の権威から独立した権威ある女性としてのウミルタという像を指摘する一方、『伝記』では彼女が正統から外れないよう配慮されていたことも指摘します。[8]は、隠修士の伝記や列聖記録から、彼らの説教など活動的生活を分析します。列聖される隠修士は修道院を建てるなど修道会的性格を有する者であり、本当に孤立していた隠修士は列聖対象とはならなかったという指摘は重要だと思います。

 [9]は有名な神秘思想家ビンゲンのヒルデガルドによる対カタリ派説教の詳細な分析です。他方、[10]はカタリ派自身の説教活動に焦点を当て、説教師、聴衆、説教の時間や場所、説教の内容を分析した興味深い論考です。

 [11]はジャック・ド・ヴィトリによる説教と歴史書から、彼が同時代の修道会(とその説教活動)をどのように捉えていたかを分析します。[12]は、司教ロバート・グロステストの説教分析により、彼が描く修道院の理想と、彼による立ち入り調査の実態を分析します。立ち入り調査では装飾されたカップを壊すなど激しい振る舞いがあったという指摘が面白かったです。

 第7部はベネディクト会の説教活動の分析です。依頼されて院外で説教活動を行った事例などが指摘されます。

 第8部で興味深かったのは[17]です。説教の成功は聴衆に左右されたこと、あくびする聴衆もいたことなど、シトー会修道院内での説教の様子が鮮やかに想像されます。

 学生時代に一部の論文には目を通していましたが、今回ざっとでも論文集全体に目を通すことができて良かったです。

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Last updated  2016.12.10 13:04:59
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