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2017.02.11
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ジャック・ルゴフ(柏木英彦/三上朝造訳)『中世の知識人―アベラールからエラスムスへ―』
~岩波新書、1977年~
(Jacques Le Goff, Les intellectuels au Moyen Ages, Paris, 1957)


 フランスを代表する中世史家ジャック・ル・ゴフ(1924-2014)の初期の著作です。
 本書の構成は次のとおりです。

―――
はしがき
I 知識人の誕生―十二世紀
II 大学と知識人―十三世紀
III 知識人からユマニストへ―十四・十五世紀

原註
参考文献
訳者あとがき
―――

 220頁ほどの新書ですが、非常に密度の濃い1冊です。

 ル・ゴフははしがきで、知識人を、「輪郭のきわめてはっきりした身分、つまり学校の教師」と定義し、さらに「一個人の省察と、教育を通じてそれを広めるという行為が一体をなしたとき、はじめて知識人はその名に値する」と言います(2頁)。彼らは、12世紀の都市の飛躍的発展の時期と軌を一にして誕生します。

 第一章は、12世紀以前のヨーロッパの知的環境の概説の後、12世紀に知識人が生まれる背景を論じます。さらに、ゴリアルド族(放浪学生)にも焦点が当てられ、彼らによる同時代人の批判や彼らの性格が分析されます(個人的にはたいへん興味深い部分でした)。そして、12世紀を代表するアベラールの、経歴と学者としての性格や、シャルトル学派と呼ばれる一群の知識人たちの思想が分析されます。
 ここで面白かったのは、権威に基づく判断が主流であった時代に、自分たちの斬新な考えをそのまま表明するのは難しいことであった、ということです。ある学者は言います。「われわれの世代には、当代の人々がいうことなど一切聴き入れないという拭いきれぬ悪癖がある。つまり自分の考えが思い浮かぶさい、もし私がそれを公にしたいと思うならば、私はそれを他の誰かに帰し、<このことをいったのは誰それで、私ではない>という……何も知らないとみられている私が、ある着想を自力で編み出したと思われるとこまるので、それを自分のアラビア研究からえたと思われるようにしている……」(77頁)。まったく文脈は違いますが、現在でもいろんなことを考えさせられる言葉だと思います。

 第二章は、大学制度に焦点が当てられます。まずは大学の成立過程や背景、組織など制度的側面が語られ、勉学の過程や試験、儀式など、学生たちの日常的な面も描写されます。学問の方法としてのスコラ学について、教師たちの生計の問題など、大学を取り巻く多くの側面が論じられます。

 第三章は、中世後期の知識人の状況について論じます。信仰からユマニスムへ、といった学問の根底の変化、国民的大学の誕生など、興味深い事例が紹介されます。
 今回、通読するのは2~3回目ですが、あらためて興味深く読みました。





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Last updated  2017.02.11 14:30:10
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