カテゴリ:本の感想(は行の作家)
藤野恵美『ハルさん』 ~創元推理文庫、2013年~ 一人娘のふうちゃん(風里さん)がまだ幼い頃、妻の瑠璃子さんを亡くした、人形作家のハルさん(春日部晴彦さん)が主人公の、連作短編集です。 ふうちゃんの結婚式の日。ふうちゃんとともに過ごした年月の中で、当時は不思議に感じた思い出深い出来事が、次々とハルさんの中で思い起こされます。 それでは、簡単に内容紹介と感想を。 ――― 「第一話 消えた卵焼き事件」 ふうちゃんがまだ幼稚園児の頃。お友達が楽しみにしていたお弁当から卵焼きがなくなっていて、お友達はそれをふうちゃんのせいだと言います。みんなで遊んでいた時間になくなっていたので、ふうちゃんであるはずはなく、ふうちゃんもまた、自分はしていないと言うのですが…。 「第二話 夏休みの失踪」 ふうちゃんが小学4年生の頃。ある日、ふうちゃんがいなくなってしまいます。ハルさんは、お世話になっている人形ギャラリーのオーナー、浪漫堂と一緒に、ふうちゃんを探します。お友達からの情報で、近所からは少し煙たがられている人物のもとを訪れるものの、けんもほろろに追い返されてしまいます。 「第三話 涙の理由」 ふうちゃんが中学2年生の頃。ふうちゃんが、ハルさんに冷たくあたり、あまり学校でのことも話さない時期がありました。その頃、ふうちゃんが持っていた体操服に、マジックで何かが書かれているのを目撃します。いじめにあっているのだろうか、ハルさんは心配しますが…。 「第四話 サンタが指輪を持ってくる」 ふうちゃんが高校3年生の頃。花屋でアルバイトを始めたふうちゃんですが、数日で大けがをして、入院してしまいます。入院した日、ふうちゃんはお客様の忘れ物を返すためにお客様を追おうとしていて持っていた忘れ物を、持ったままでした。ツリーのあいだで待ち合わせをしていると、謎のようなことばをお客様は言っていたようなのですが…。 「第五話 人形の家」 そして、結婚式。二人の幸せを祈るハルさんですが、しかし一つだけ疑問を抱いてしまいます。それは、なぜふうちゃんがその相手を選んだのか、ということでした。 ――― 本屋で、まずなんとなく背表紙のタイトルを見て気になり、表紙の絵が素敵で、裏表紙の内容紹介をみてどストライクだと思い、ずっと気になっていた作品。このたび購入し、読んで良かったです。思ったとおり、完全に好みの作品でした。 少し頼りないハルさんですが、仕事に打ち込む姿はとても格好がいいと思います。得意分野、あるいは自分がすべきと思う道に邁進する姿は、それが趣味であれ仕事であれ、私はかっこよいと思います。さらにハルさんは家庭も大切にしているので、ますます素敵です。 そしてふうちゃん。自分自身の娘と重ね合わせずにはいられません。娘の成長にあわせて、この物語もずっといろんな表情を見せてくれるような気がします。大切にしていきたい1冊です。 ・は行の作家一覧へ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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藤野さんの小説は未読ですが、来週の通勤途上の友にしたいと思います。
(2017.02.18 12:52:35)
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