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2017.03.11
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島田荘司『改訂完全版 灰の迷宮』
(島田荘司『島田荘司全集VI』南雲堂、2014年、433-624頁)


吉敷竹史シリーズの長編です。
それでは、内容紹介と感想を(文庫版の記事をほぼ再録)。

―――
 昭和62年(1987年)2月10日。朝、新宿でバス放火事件が起こった。浮浪者風の男がバスに乗り込むと、一人の乗客が急いで逃げ出した。男はまず、乗客が残したバッグに丹念にガソリンをまきはじめた。乗客たちが男を取り押さえようとしたとき、バスから逃げ出した乗客がタクシーにひかれてしまい、放火(未遂)犯は逃げてしまう。その後、おそらくなんらかの過失で、バスは炎上した。
 7年前、全く同じ状況で起こったバス放火事件の、これは模倣ではないかと、吉敷は考えたが、被害者の佐々木徳郎の過去を追う内に、事件は複雑な様相を見せる。2年前に起こった事件の死者、壺井が持っていた、新聞記事の切り抜きを、佐々木が持っていたというのである。それでは、2年前の事件の犯人は、佐々木だったのか―。
 佐々木の家庭、そして壺井のアパートのある鹿児島の刑事、留井と連携をとりながら捜査を進める吉敷だが、留井と関係のあった女、茂野恵美に対する事情調査が難航していることもあり、吉敷自身が鹿児島に向かうことになる。
 2年前に起こった鹿児島の大降灰により、佐々木の家の屋根が落ちたことは、どんな意味を持っているのか。壺井が、佐々木と近づこうとしていたが、とつぜん彼から距離を置き、競馬場の関係者と近づこうとしたのはなぜか。なぜ、佐々木が壺井を殺したのか。なぜ、奇妙なバス放火が行われたのか。複雑に絡む謎に、吉敷は推理をめぐらせる。
―――

 事件自体は、なにか、幻想的な大がかりな謎が提示されるわけでもなく、同じく大がかりなトリックが用いられているわけでもない。それでも、複雑に絡み合ったいくつもの奇妙な謎は、魅力的で、その謎の数々が解かれていく過程はわくわくします。
 この物語でもっとも素敵なのは、吉敷さんと恵美さんのやりとり―特に、恵美さんの行動だと思います。<文字色を反転させます>たとえば、恵美さんが死亡したとき、遺品として見つけられた、粉々になったインスタントラーメン。これだけでとても感情が動かされたのですが、エピローグで語られる恵美さんの行動にもまた、感動しました。友達のところで、吉敷さんの似顔絵を描き、どれだけ彼が素敵か語り、彼においしいラーメンを食べさせてあげるんだと話していた恵美さん。彼女の姿を思うと、たまらないような気持ちになります。吉敷さんが、事件の当事者のためにはじめて涙を流したというのも、印象的でした。<ここまで>
 留井刑事も素敵でした。なにより、エピローグで紹介される彼の手紙が良かったです。おいしいラーメンの作り方について、留井さんは自ら編み出した料理法について詳しく書いている…らしいのですが、事件とは無関係ということで省略されていました。惜しい!
 これは素敵な物語でした。良い読書体験でした。





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Last updated  2017.03.11 21:29:08
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