カテゴリ:本の感想(さ行の作家)
島田荘司『改訂完全版 毒を売る女』 (島田荘司『島田荘司全集VI』南雲堂、2014年、625-796頁) 8編の短編が収録された短編集です。中には、御手洗シリーズの短編も吉敷シリーズの短編も(1編ずつ)収録されていて、嬉しい一冊です。 それでは、内容紹介と感想を(文庫版記事をほぼ再録)。 ――― 「毒を売る女」主婦友達が私以外におらず、いつも私にかまってくる大道寺靖子が、梅毒にかかっているかもしれないことが分かった。彼女の家族との交流を避けようとする私だが、私の夫が医者であるために、ますます靖子が接近してくるどころか、それまで既製品をおみやげにもってきた彼女が、手作りの食べ物ばかり持ってくるようになってきた。梅毒がうつされるかもしれないと、私は次第にノイローゼ気味になっていく。 「渇いた都市」詐欺師の女にだまされながらも彼女にほれた男が、転落していく。 「糸ノコとジグザグJigsaw And ZigZag」クリスマス特集として、リスナーが自由に3分間話すという企画をたてたラジオDJのもとに、リスナーから、自殺をほのめかす、暗号めいた言葉が届いた。番組中に行うとほのめかされている自殺を、DJはリスナーたちの協力をえて食い止めようとする。 「ガラスケース」会社からもらったガラスケースの中でおたまじゃくしを飼い始めた私。ガラスケースの中では、生命の進化が再現され始める。 「バイクの舞姫」15年前に亡くなった恋人が、バイクに乗って現れた―。私は、恋人が遺していた言葉をたよりに、入江長八について調べ始める。 「ダイエット・コーラ」25時間周期の生活になじんでしまったダイエット・コーラの発明家に待ち受けていたのは…。 「土の殺意」かつて国土庁につとめていた男が殺された。死亡推定時刻の前に、居酒屋で彼といさかいを起こしていた男が疑われたが…。 「数字のある風景」電話をかけると、相手の言葉がすべて数字に聞こえるようになった男は、数字で世界の現象を理解できるようになり、予言者気取りになっていった。しかしある日、とつぜん数字の意味が理解できなくなり…。 ーーー いわゆるミステリーに該当するのは、「糸ノコとジグザグ」と、「土の殺意」ですね。前者は、明記はされていませんが御手洗さんが登場、後者は吉敷さんが登場します。もっとも、特に「土の殺意」というのは、事件の犯人を暴くというよりも、社会的な問題を描くことに重点があるように思います。 表題作は、サスペンスホラーとでもいうのでしょうか。昔の火サスの雰囲気ですね。このようにドラマに例えるなら、「渇いた都市」は、世にも奇妙な物語といったところでしょうか。 「ガラスケース」は、綾辻行人さんのある短編を連想しましたが(もっとも、島田さんの作品の方が先に書かれています)、こういう話は好きです。 「数字のある風景」は、『眩暈』の1シーンを連想させますが、この短編だけだと、ちょっと私にはよく分かりませんでした。 島田荘司さんの幅広い作風を感じさせてくれる一冊です。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2017.03.18 19:08:37
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