カテゴリ:本の感想(さ行の作家)
島田荘司『改訂完全版 切り裂きジャック・百年の孤独』 (島田荘司『島田荘司全集VII』南雲堂、2016年、255-418頁) ノンシリーズ(?)の長編です。1888年に起こった、ロンドンでの切り裂きジャック事件の真相について、ひとつの鮮やかな仮説が提示される名作です。 それでは、内容紹介(2007.09.20掲載の文庫版記事より再掲)と感想を。 ――― 1988年9月24日。西ベルリンの、クロイツベルクと呼ばれる貧民街で、3人の娼婦が一夜に殺されるという事件が起こった。被害者は、みな英国系で、40代の女性だった。恐ろしいことに、被害者たちは頸動脈を一気に切られた上に、腹部を切断され、内蔵をひきずりだされていた。翌日の夜、大雨という悪条件にもかかわらず、さらに二人の娼婦が殺害された上に、婦人警官も被害にあった。 現場付近に残された、「ユダヤ人は、みだりに非難を受ける筋合いはない」という奇妙な落書き。それは、100年前のロンドンで起きた、切り裂きジャック事件の際に残された落書きと、同じ文言だった。 切り裂きジャックは、5人の娼婦を殺害したきり、犯罪を繰り返すことはなかった。ベルリンでの事件の犯人も、5人の娼婦を殺したきり、事件を起こすことはなかった。 犯人逮捕に苦心する警察に、100年の時をこえて起こった酷似した事件を解決できると、名乗り出す自称研究者が現れる。 ――― 久々の再読ですが、例によって真相を忘れていたので、新鮮な気持ちで楽しめました。作中事件の解決もさることながら、1888年ロンドンでの事件に、従来ない仮説(そして十分に説得力があるように感じます)を提示されているのが最大の魅力ですね。 では、ちょっと反転させて、少し書いておきます。<反転>本書の探偵役、クリーン・ミステリ氏は、どうも御手洗潔さんのようですが、このブログの所有作品一覧では、本書をノン・シリーズのところに並べておきます。私が、ずっとノン・シリーズの作品だと思っていたこともありますが、御手洗さんの名前がはっきり出ているわけでもありませんし(「糸ノコとジグザグ」もそうですね)。御手洗さんの登場は、一種のファン・サービスととらえました。<ここまで>(文庫版記事より再掲) 事件が事件なだけにグロテスクな描写もありますが、これは面白かったです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2017.07.12 22:45:31
コメント(0) | コメントを書く
[本の感想(さ行の作家)] カテゴリの最新記事
|
|