カテゴリ:本の感想(か行の作家)
~創元推理文庫、2017年~
円紫さんと私シリーズ第6作です。 それでは、簡単に内容紹介と感想を。
――― 「花火」三島由紀夫が座談会で、引用の作者名を誤ったのはなぜか。ピエール・ロチの作品と芥川作品の関係性と芥川作品の意味とは。 「女生徒」正ちゃんと久々にゆっくり話をした「私」は、一冊の本をもらいうける。太宰治の「女生徒」。それは、実際に太宰治に届けられた女生徒からの手紙をもとにした作品という。「私」は、もとの手紙と太宰作品を比較し、太宰作品の深みを感じていく。 「太宰治の辞書」円紫先生と久々に過ごす「私」は、先生から一つの問題を示される。「女生徒」に書かれていた「辞書」とは、いったいどんな辞書だったのか。
「白い朝」家の前にとめているトラックの、バックミラーの霜だけなくなっていたのはなぜか。
「一年後の『太宰治の辞書』」以下はエッセイ。本物の「太宰治の辞書」に出会う経緯などが描かれます。 「二つの『現代日本小説体系』」『六の宮の姫君』に登場する『現代日本小説体系』の巻について、丁寧に作品を読んで評したブロガーの方がずれを指摘します。なぜずれが生じてしまったのか。 ―――
古本屋で本書を見つけたとき、びっくりしました。続きが読めるなんて、と。(解説の米澤穂信さんも書いていらっしゃいますが、全く同感でした。) 『朝霧』で大学を卒業し、出版社に就職した「私」ですが、本書ではもうお子さんもいらっしゃいます。正ちゃんも登場し、思い出話に花をさかせるあたり、このシリーズは時の流れがとても大切に感じられるように思います。 初期の日常の謎の要素は薄まり、文学作品の謎解きに重点が置かれています。文学案内としても、そこから謎を見いだして読み解くというミステリとしても、楽しめる作品です。 第一話でふれられるピエール・ロチについては本書ではじめてふれた気がしますし、太宰の「女生徒」もはじめて知り面白そうだと思いました。同時に、自分の教養のなさも痛感する次第ですが…。 良い読書体験でした
お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2019.05.02 22:20:00
コメント(0) | コメントを書く
[本の感想(か行の作家)] カテゴリの最新記事
|
|