カテゴリ:本の感想(や・ら・わ行の作家)
~創元推理文庫、2018年~
大刀洗万智さんがネパールで遭遇した事件を描く長編。本作は、実際に起こったネパールでの王宮事件を題材にしており、深みがあります。作中時系列としては、前回紹介した『真実の10メートル手前』の表題作と、同短編集所収の「正義漢」の間に位置づけられる事件です。 それでは、簡単に内容紹介と感想を。
――― 2001年。フリーの記者になった大刀洗万智は、『月刊深層』に海外特集の記事を書くため、ネパールを訪れていた。初日はサガルという少年や、自称破戒僧の八津田らに現地を案内してもらいながら、現地の様子を頭に入れて過ごしていた矢先、BBCニュースで衝撃的な事件が報じられた。王宮で、現国王の息子が、王や王妃らをはじめ複数の王族を殺害したというのである。大刀洗は王宮にも通じる軍人への取材を試みるが、記事を公表する意味を答えられず、詳しい内容は何も聞けないこととなった。 国内は混乱し、王の葬列の後には、事件の真相を隠蔽しようとする政府らへの失望などから暴動も発生。軍や警察も動き、厳戒態勢が取られることになる。そんな中で、外出していた大刀洗は、取材に応じてくれた軍人の死体を発見する。背中には刃物で文字が記されていた。はたしてその文字が意味することとは。彼の死は、王宮事件との関連はあるのか。また、大刀洗と会ったことに、彼の死の原因はあるのか。 大刀洗は、事件の解明に乗り出すこととなる。 ―――
これは面白かったです。 Wikipediaによれば、ネパール王族殺害事件は、いろいろ謎も深く、未解決のようですね。本書では、大刀洗さんがまさにその事件があった頃に現地にいたという設定で、臨場感をもってその状況が描かれています。また、本書の主眼である軍人殺人事件の謎解きも魅力的です。 大刀洗さんが、記者という自分の仕事に深く向き合うシーンも印象的です。 良い読書体験でした。
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Last updated
2019.06.30 22:06:24
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