カテゴリ:西洋史関連(日本語書籍)
~山川出版社、2011年~
著者の亀長先生は、現在、学習院大学文学部教授。主著に『中世ジェノヴァ商人の「家」―アルベルゴ・都市・商業活動―』刀水書房、2001年(私は未見)があります。 本書は、山川出版社の世界史リブレットの1冊。中世イタリアの都市の流れや性格が、簡明に描かれていて有用な一冊です。 本書の構成は次のとおりです。
――― 中世イタリア都市の魅力 1 コムーネの登場 2 公平性の原理と諸制度の展開 3 中世都市の財政と市民生活 4 都市の向こうの中世イタリア都市民
制度から見るイタリア都市年表 参考文献 ―――
以下、章の流れに沿って簡単にメモしておきます。 1では、フィレンツェ、ヴェネツィア、ジェノヴァの成立の略史を見たのち、コムーネ(自治的性格をもつ都市)の性格、そこでの支配層や裁判組織などについての概要が示されます。各コムーネごとに多様な成立の背景があることが分かるとともに、「当時の人びとが納得できる範囲での規制の枠組みを考え、当時なりの理性を社会に示し、コムーネは治安維持組織としての存在意義を高めていく」(21頁)という指摘を興味深く読みました。
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いつも興味深い文献解説を楽しく拝読させていただいています。
夏は、酷暑を他所に空調の効いた部屋で、現在の俗世から少し距離を置いた本を読むのに適した時期。100ページに満たない世界史リブレットは、部屋で寛ぎながら読むのに適度な分量とも言えますね。 中世イタリアというと、塩野七生さんの著作がつい頭に浮かんでしまいますが、亀長先生のこの著作は社会システムとしての中世イタリアの実相が淡々と書かれていそうで、興味深いです。 特に第三章、都市の経済についての論稿は、現在のブロックチェーンにも通じる「信用経済」が発展したと言われる中世イタリアの諸都市で、どのような貸付や投機が行われていたか、一読してみたくなりました。 暑い最中、お体ご自愛下さい。 (2019.08.04 09:39:34)
コメントありがとうございます。
快適な部屋で、コーヒーでも飲みながらゆっくりと読書できれば素敵なのですが、今年度は想像以上に忙しく、寝る前に少しの読書がメインになっています。くつろぎながら読書したいですね。 さて、いただいたコメントをもとに手元の本書を見てみると、経済面の理解が疎いこともあり、第3章にはふせんを貼っていない有様で、うまいお返事ができかねることをお許しください。 ただ、ご承知のとおり、リブレットということで大変読みやすいです。本書は必要があって目を通したのですが、中世イタリア都市史の概観をつかむにはうってつけの一冊でした。 (2019.08.07 22:08:06) |
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