カテゴリ:西洋史関連(日本語書籍)
~原書房、2019年~ (Michel Pastoureau, Le loup. Une histoire culturelle, Paris, Édition de Seuil, 2018)
ミシェル・パストゥローによる動物の歴史のモノグラフです。原著が2018年ですから、わずか1年後に訳書が刊行されたことになります。原著の購入をどうしようかと思っていたので、訳者と出版社に感謝です。 著者については、こちらの記事をご覧下さい。著者は紋章や色彩、動植物の歴史の研究で有名で、このブログでも、牛の歴史、豚の歴史についての著者の論文や、熊の歴史についての単著(英訳版と邦訳版)を紹介したことがあります。 本書は、狼に焦点を当てた一冊。注はありませんが、序論で、「[熊、狼、猪、鹿、狐、カラス、鷲、白鳥などの]計20種あまりの動物がヨーロッパの文化史で重要な役割を演じてきたのである。本書を嚆矢とする一連のモノグラフはこの歴史に捧げられている」という記述があり(9頁)、色の歴史のようにシリーズ化されるのでしょうか。今後が楽しみです。 さて、前置きが長くなりましたが、本書の構成は次のとおりです。
――― 序文 第1章 古代の神話体系 第2章 ローマの狼 第3章 野獣より強い聖人 第4章 動物誌のなかの狼 第5章 イザングラン―笑いのための狼 第6章 人狼と魔女 第7章 呼称とエンブレム 第8章 寓話と童話 第9章 農村部の野獣 第10章 ジェヴォーダンの「獣」 第11章 近代の信仰と迷信 第12章 現代の狼
原典・参考文献 訳者あとがき ―――
著者は中世史が専門ですが、膨大な文献を駆使して、先史時代から現在までの狼の文化史を平易に描いているのは、いつもながら見事です。 12-13世紀に成立した『狐物語』(参考:『狐物語』原野昇他訳、岩波文庫、2002年)では、狼のイザングランは狐のルナールにさんざん辱められる、「愚かで滑稽な存在」(64頁)となっています。その背景として著者は、「感情的なはけ口というより、むしろなんらかの現実を反映したものだった」(68頁)と述べ、この時代には狼への恐怖心は薄れており、それが再発するのは中世末だったといいます。ですが、なぜこの時代に狼への恐怖心が薄れていたのか、という点に言及されておらず、物足りなく感じました(軽微な点かもしれませんが)。 ただ、気になったのはその点だけで、ことわざや、赤頭巾ちゃんの解釈などなど、面白いテーマが満載で、興味深く読みました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2019.12.19 22:37:59
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