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のぽねこミステリ館

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2020.01.15
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James M. Powell, Anatomy of a Crusade 1213-1221, University of Pennsylvania Press, 1986

 

 第5回十字軍の背景、最中の状況、そしてその失敗に至る過程を詳細に論じる一冊。以前紹介した​ジャン・リシャール(宮松浩憲訳)『十字軍の精神』法政大学出版局、2004年​所収の宮松浩憲「解説に代えて」は、十字軍参加者の家系に関する自身の研究を紹介したのち、「このような研究をプロソポグラフィックの面で発展させたのが、十字軍の社会史的考察と謳っているパウエルの『十字軍の解剖学』であります。」(233頁)と本書に言及しています。さらに宮松先生は、本書の特質を指摘して、その意義を評価しています。

 著者のパウエル(1930-1211)の記念論文集を刊行したバードによれば、彼は、平和、教皇インノケンティウス3世、十字軍などの分野で重要な業績を多く残しているとのことです(Jessalynn Bird, “Introduction”, in Jessalynn Bird (ed.), Papacy, Crusade, and Christian-Muslim Relations, Amsterdam University Press, 2018, p.13-17)。

本書の構成は次のとおりです。

 

―――

図表一覧

謝辞

略号

序文

 

第1部 十字軍の準備

 第1章 十字軍の計画

 第2章 試験場

 第3章 十字の使命

 第4章 十字軍徴兵

 第5章 十字軍の財政

 第6章 リーダーシップの問題

第2部 十字軍

 第7章 第一段階

 第8章 侵略と定住

 第9章 ダミエッタ征服

 第10章 十字軍の失敗

 

エピローグと結論

 

付録

 1 1218226日の教皇ホノリウス3世から司教、首席司祭、教師であるルッカのウゴへの書簡

 付録2、3、4への注

 2 十字軍誓願を行った個人 1213-1221

 3 参加が疑わしい個人

 4 Collection courtois

 

参考文献

索引

―――

 

 第五回十字軍は、1213年にインノケンティウス3世により計画され、1221年に失敗に終わります。

 序論は先行研究と本書の方法論を述べ、第五回十字軍に先行する第四回十字軍と少年十字軍との関係にもふれます。方法論でいけば、本書は説教史料にも目を配るほか、財政的な面も重視します。また特に本書において重要なのは、800人以上の十字軍志願者の情報をコンピュータ処理して、マンパワーの状況や死亡率も明らかにしようとしている点です。


 第1章は教皇インノケンティウス3世が1213年に発出した『より大きなQuia maior』の内容を詳細に見ていきます。この中で、「十字軍はキリスト教社会の改革のための手段であった」(p.19)との注目すべき見解や、いろんな事情で従軍できない人も寄付などにより参加できることとした=参加者をほぼ全てのキリスト教徒に拡大し、彼らの免罪を約束したことなどが示されます。


 第2章は、教皇特使ロベール・ド・クールソンの役割や、1215年の第四回ラテラノ公会議についての論述です。


 第3章は十字軍に関する説教史料について論じます。個人的に興味深いのは、十字軍説教がほとんど現存しない理由についての、「その特化された特徴と、それらが聖節説教や聖人祝日説教という通常の説教サイクルに適さないという事実が、それらの損失の主な理由であろうと推測できるにすぎない」(p.51)との記述です。


 第4章は十字軍のリクルートについての詳細な分析です。地域別に概要を示したのち、リクルートにおける親族関係の重要性(親子、兄弟がともに参加するなど)を指摘しており興味深いです。また、参加するには個人の決定が重要であったこと、参加者の多くは説教活動の結果として個人的に十字を取った[=十字軍に参加した]とする指摘も重要と思われました。


 第5章は第五回十字軍の財政状況です。なんのために、どのくらいの収入と支出があったかを整理した表も付されており有用です。


 第6章は、第五回十字軍の失敗の原因として「賢く尊敬される指導者が不在であった」ことをあげる先行研究を批判し、そう単純な問題ではないことを論じます。


 第7章以降は、第五回十字軍について通史的に詳述しますが、記事では省略します。


 冒頭にふれた宮松先生による研究史でも重視されているほか、同じく冒頭にふれたBird編のパウエル記念論集などが刊行されていることを受け、研究史をおさえる必要性を感じて読んだのですが、正直だいぶ流し読みしたので、十分な理解はできていません。しかし、この度、概要を把握できたのは良かったと思います。

 

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Last updated  2020.01.15 23:24:56
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