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2021.03.03
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ジャン・ピエール・ルゲ(井上泰男訳)『中世の道』
~白水社、1991年~
(
Jean-Pierre Leguay, La rue au Moyen Age, Ouest-France, Rennes, 1984)

 西洋中世の都市景観や社会生活といった諸相を、道(特に街路)の観点から論じる面白い一冊です。
 本書の構成は次のとおりです。

―――
凡例
序文

第1編 都市景観における街路
 第1章 街路の配置
 第2章 中世の不潔
 第3章 現われはじめた都市計画
 第4章 街路の識別
第2編 街路に生きる人々
 第5章 ささやかな路上の営業
 第6章 街路―疎外者の領分
 第7章 街路を支配する権力―尊重された権威、対抗する勢力
 第8章 街路の慰み

訳者あとがき
参考文献
地図
―――

 レジュメ風にメモしておきます。
 第1章…大通り、直線の道路はまれ。「おずおずとした都市計画」も存在
 第2章…汚物などの道路への廃棄、塵芥などの道路への堆積、豚などの徘徊
 第3章…道路舗装のための資金(会計記録から分析)、道路衛生への努力(公共的下水の設置など)
 第4章…道路は三つの方法で識別
 (1)街路の名称…(a)大通り、(b)宗教的名称(聖人名など)、(c)市民的・軍事的名称(職業名、特徴的な経済活動名など)、(d)地誌的名称(神隠し、峠道など)、(e)洒落、(f)父祖の名に基づく名称
 (2)装飾・標識…植物、壁画、絵画パネルなど
 (3)その他…土地台帳の役割を果たす税務上の史料から(密集の状況など)
 第5章…街路の職業別化(パン屋などそれぞれの街区に必要不可欠な職業の場合は分散[157])、行商人の騒音、流動する労働者、大市など
 第6章
 (1)疎外者会の諸要素…賤しい稼業、犯罪者、貧困者(捨て子)
 (2)暴力…暴力、悪口、窃盗など
 (3)乞食…偽物の乞食、救貧制度
 (4)疎外者の街路と街区…ユダヤ人街、「多情な通り」
 (5)風評…噂話
 (6)街路の安全と抑圧のための方策…追放、刑罰(見世物としての要素)、暴力的娯楽の抑圧
 第7章…行政区分、教区組織、入城式等の行列、動乱
 第8章…愚行、狂気、シャリヴァリ、謝肉祭、演劇

 キーワードのメモとなりましたが、以上のとおり、「街路」の観点か実に多様なテーマが論じられています。
 注は引用史料の出典など最小限にとどめられており、その他の記述の根拠にすぐアクセスできるわけではありませんが、巻末には参考文献目録もあるので、そこから補足することは可能です。
 ずっと以前から気になっていた本書をこの度通読できて良かったです。

2020.11.06読了)

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Last updated  2021.03.03 23:28:52
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 Re:ジャン・ピエール・ルゲ『中世の道』(03/03)   シモン さん
3月も2週間が過ぎましたね。そろそろ本格的に春の気配がやってくる、けれども例年のようにウキウキした気分にもなれない中、心の平穏は読書によって取り戻すしかなさそうです。

さてタイトルの「中世の道」の「道」が、騎士道とかそんな抽象的な「生き方」を示すのではなく、まさしく交通インフラとしての「道」だということに興味を惹かれました。

日本でも、芦原義信「街並みの美学」という名著がありますが、まさに建築家・都市計画家としての視点も含めて、西洋中世の往来の景観を記述した本は、現代との比較の意味でも、面白そうですね。

amazonで安価な古書が入手できそうなので、早速注文してみました。
今回も興味深い本のご紹介をありがとうございます。 (2021.03.12 16:33:06)

 シモンさんへ   のぽねこ さん
コメントありがとうございます。
こちらこそ、いつも関連する文献をご紹介いただき、勉強になっています。
本書の原著の刊行は約40年前になるので、アップデートできる内容もあると思われますが、制度史的観点だけでなく生活に密着した観点からの叙述も豊富で、興味深い一冊でした。 (2021.03.14 12:50:23)

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