アンソロジー『密室』
~角川文庫、1997年~
密室をテーマにしたアンソロジー。8編の作品が収録されています。
収録作品と概要は次のとおりです。
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姉小路祐「消えた背番号11番」人気選手がインタビュー後に練習している間に、ユニフォームが消えてしまった。密室状況の中、ユニフォームはいかに持ち去られたのか。
有栖川有栖「開かずの間の怪」怪談話がささやかれる病院跡地で、怪談の謎に迫る推理小説研究会のメンバーたち。アリスたちが見た人形は、いかに開かずの間に消えたのか。
岩崎正吾「うば捨て伝説」うば捨て伝説のある土地で、谷を挟んだ集落にはやまんば伝説が残っていた。「密室状況」のうば捨ての場と、やまんば伝説の関係とは。
折原一「傾いた密室」傾いた家で、依頼者の父と叔父が口論をしていた後、父が死体で発見される。事故として処理されそうになるが、依頼者は叔父による犯行と考え、覆面作家に解明を依頼する。
二階堂黎人「密室のユリ」推理作家がマンションの一室で殺された。ドア、窓ともに施錠された、完全な密室状況にように思われた。
法月綸太郎「ロス・マクドナルドは黄色い部屋の夢を見るか?」内容紹介省略。
山口雅也「靴の中の死体」母と子供たちの折り合いの悪い一家で、クリスマスパーティーのため家族が集まった翌朝、事件が発覚する。靴の形をした離れで、母親が殺されていた。雪には一つの足跡しかなく、雪の密室状況にあった。
若竹七海「声たち」貿易会社の会長が殺された。しかし、彼に恨みをもつ容疑者たちは、離れた場所で語り合っており(録音テープも残されており)、いわば容疑者たちが密室にいる状況での、それは事件だった。果たして犯人は。
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すでに本ブログで紹介したことがあるのは次の3作品。
有栖川有栖「開かずの間の怪」は、有栖川有栖『江神二郎の洞察』(東京創元社、2012年)に再録された短編です。(内容紹介はその記事からそのまま引用。)再読ですが、あらためて楽しめました。
二階堂黎人「密室のユリ」は、二階堂黎人『ユリ迷宮』(講談社ノベルス、1995年)に再録。(内容紹介は同記事から引用。)
法月綸太郎「ロス・マクドナルドは黄色い部屋の夢を見るか?」は、法月綸太郎『パズル崩壊』(講談社ノベルス、1998年)に再録。同記事でも、内容紹介は割愛しましたが、とにかくインパクトが強烈です。
その他、折原一さんの短編も、おそらくブログを公開する前に『ファンレター』に収録されたものを読んでいるはずですが、同書は手元に置いていないので、記事としては初のはずです。
今回はじめて読んだ作品で特に面白かったのは「消えた背番号11番」と「うば捨て伝説」。前者は多くの関係者の中から犯人が導かれる過程が鮮やか。後者は民俗学的な趣もあり大変興味深く読みました。
(2020.11.29読了)
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