乾くるみ『カラット探偵事務所の事件簿2』
~PHP文芸文庫、2012年~
謎解きだけを専門に扱う探偵事務所を開くという古谷謙三さんに誘われ、助手をつとめることになった井上さんが記録者をつとめる短編集の第2弾。7編の短編が収録されています。
それでは、簡単に内容紹介と感想を。
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File6「小麦色の誘惑」水着パーティーで日焼けした古谷の甥の腕に、ハート形の日焼けしていない跡が残されていた。パーティー参加者の誰がこんなことをしたのか、突き止めてほしいという。
File7「昇降機の密室」古谷事務所のある雑居ビルのエレベーター修理中に、だれも入れなかったはずの4階のデザイン事務所から、あるものがなくなっていた。オーナーは、ものの正体は明かさないまま、犯人捜しを依頼する。
File8「車は急に……」井上が車をコインパーキングに入れようとすると、老人と若者がけんかをしていた。老人は若者が突っ込んだといい、若者は老人がバックしてきたという。興味をもった古谷は、真相解明に乗り出す。
File9「幻の深海生物」インターネットにわずかに残された手掛かりから、健康に良いという深海生物を探してほしいとの依頼が舞い込む。早速、手掛かりを求めて静岡まで出かける二人だが…。
File10「山師の風景画」36年音信不通だった弟の訃報とともに、弟が遺した絵画を渡された兄は、弟が鉱石研究をしていたため、絵は鉱石の在り方を示すものではないかと考え、古谷に場所の特定を依頼してくるが…。
File11「一子相伝の味」父の急死により、受け継がれてきたソースのレシピが分からなくなってしまった。もし可能なら、レシピを復元できないか、という雲をつかむような依頼が舞い込んできて…。
File12「つきまとう男」古谷事務所が入る雑居ビル2階のホステスから、何者かが自分のアパートのドアポストに、パブで出しているお土産を入れられる、犯人がだれか特定してほしいという依頼が入る。心当たりのある2名を、古谷、井上がそれぞれ尾行し、二人とも犯行をしていないはずの夜、彼女のアパートにはやはりお土産が届けられていた…。
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今回記事を書いていて気付いたのですが、事件名がすべて6文字で統一されています。凝ってますね…。
本作で好みだったのは「車は急に……」。思わず「なるほど!」と納得の解決でした。(後味が良いわけではありませんが…。)
「一子相伝の味」も好みです。料理がおいしそうです。
というんで、どれも楽しく読める短編集でした。
(2020.12.06読了)
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