のぽねこミステリ館

2021/11/02(火)23:34

鷺沢萠『愛してる』

本の感想(さ行の作家)(231)

鷺沢萠『愛してる』 ~角川文庫、1994年~ 「ファッサード」というナイトクラブにつどう人々を中心とした連作短編集。16の物語が収録されています。  物語は、「わたし」の一人称で語られます。  チーフDJのジュニアが「ファッサード」を辞めるときを描く「真夜中のタクシー」から始まり、友人たちの恋愛模様や、「わたし」自身の迷いや苦しさ、そしてそんなときに話ができる仲間たち、といった日常が語られます。冒頭の「真夜中のタクシー」もそうですが、「灯りの下に」など、タクシーを題材にした物語がいくつかあり、印象的でした。  北方謙三さんによる解説に引きずられた部分もありますが、たとえば「わたし」の職業は明らかにされず、友人たちの恋愛の状況から過去の「わたし」の出来事の回想がなされるなど、「心境小説」としての趣きがあります。ふとしたときの「わたし」の思いの描写が好みです。(2021.08.18読了)​・さ行の作家一覧へ​

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