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2022.04.30
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西洋中世学会『西洋中世研究』2
~知泉書館、2010年~


 西洋中世学会が毎年刊行する雑誌です。
 少しずつバックナンバーの紹介をしていきます。
 第2号の構成は次の通りです。

―――
【特集】メディアと社会
<趣旨説明>
大黒俊二「西洋中世のメディアとインメディア」
<報告>
赤江雄一「中世後期の説教としるしの概念―14世紀の一説教集から―」
木俣元一「メディアとしての「聖顔」:13世紀イギリスの写本挿絵を中心に」
青谷秀紀「プロセッションと市民的信仰の世界―南ネーデルラントを中心に―」
伊藤亜紀「青を着る「わたし」―「作家」クリスティーヌ・ド・ピザンの服飾による自己表現―」
土肥由美「受難劇vs.聖体祭劇―「イエス・キリストの受難」を巡る表現と受容に関する一考察―」

【論文】
一條麻美子「「愛の洞窟」の3つの窓―ゴットフリート・フォン・シュトラースブルク『トリスタン』における名誉の問題―」
向井伸哉「ルイ9世期南仏ビテロワ地方における国王統治」
白幡俊輔「15世紀イタリア傭兵隊長の戦術と戦略」
鴨野洋一郎「1500年前後のフィレンツェ絹織物工業と国際市場―セッリストーリ金箔会社の経営記録から―」

【研究動向】
古川誠之「中世ドイツ都市印章研究と「都市の表象」」

【新刊紹介】

「西洋中世学会若手セミナー報告記」
神崎忠昭「「第7回日韓西洋中世史研究会」に参加して」
―――

 特集趣旨説明は、「メディアとインメディア」をキーワードに、メディア(中間にあって媒介するもの)とインメディア(直接性)の弁証法に西洋中世の特徴があることを指摘し、各報告の概要、そして学会で行われた主要な質疑応答を紹介します。
 赤江報告はイングランドの托鉢修道士ジョン・ウォールドビーの説教集を取り上げ、「しるし」の理論と「記憶術」がいかに組み合わされ、また聴衆にも共有されていたかを示します。
 木俣報告は写本挿絵の聖顔について論じます。大きなスケールで描かれた聖顔が、超越的な領域を示すためとの指摘を興味深く読みました。
 青谷報告は後期中世の行列(プロセッション)を取り上げます。行列と処刑との関係、先行する説教がプロセッションを解説した事例、プロセッションへの君主権力の介入と聖血の取り扱いの変化の平行関係など、興味深い指摘がなされます。
 伊藤報告は「執筆によって生計を立てた初の女性」であるクリスティーヌ・ド・ピザンが、挿絵において青い服を着た姿で描かれていることに着目し、その意義を論じる、こちらも興味深い論考。青を着ていない場合にはその理由があることまで指摘するとともに、クリスティーヌの身分論、紋章論など、個人的に関心のあるテーマも論じられています。
 土肥報告は青谷報告に関連し行列などの場で演じられた受難劇と聖体祭劇を取り上げ、それらの関連と相違を論じます。稿末(81-82)の、両者の比較表が有用です。
 一條論文は騎士道系の『トリスタン』のうち、ゴットフリートの作品を取り上げ、トリスタンとイゾルデが過ごす「愛の洞窟」の3つの窓に着目し、先行研究が見逃していた点を指摘するとともに、その意義と二人が宮廷に戻るに至る理由をめぐって二つの「名誉」の概念があったことを示します。
 向井論文は、国王による村落の具体的な統治の実態を明らかにする論考。村落のレベルに応じて強制徴収の有無があり、一定の村落には寛容が示されることを示します。
 白幡論文は軍事史の観点から、従来軽視されてきたイタリア傭兵隊の戦術を見直し、技術者が登用されていたことなどを示します。一点、ある戦争について、史料により異なる数字(戦闘数)が現れることが指摘されます(122-123)が、その理由が本論中では特に言及がなく、気になりました。
 鴨野論文は、日本ではほとんど研究が進んでいないルネサンス期の絹織物工業について、製造、販売など具体的な諸側面を論じます。
 古川論文は、先行研究を丁寧に整理し、都市印章の意義を論じます。法的に認可された都市の成立以前に教会などが用いていた印章が、都市に引き継がれ、その性格を変えていったという指摘がなされます。
 本号から新刊紹介のコーナーも始まり、本号では47冊が紹介されます。池上俊一先生が紹介しているジャン=クロード・シュミット『誕生日の発明』(邦訳なし)が気になりますが、まだ入手していません。

 以上、どの論考も興味深く再読しました。

(2022.01.31再読)

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Last updated  2022.04.30 12:23:30
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