のぽねこミステリ館

2024/05/11(土)13:47

松本清張『点と線』

本の感想(ま行の作家)(136)

​​ 松本清張『点と線』 ~新潮文庫、1987年改版(1995年82刷)~  あまりにも有名な長編作品ながら、今回初めて読みました。  それでは、簡単に内容紹介と感想を。 ―――  博多付近の海岸で、青酸カリ中毒で死亡した男女2人の遺体が発見された。  情死として処理されていく中、古参の鳥飼刑事は、男性が持っていた列車食堂の受取証に記されていた「御一人様」という記載に疑問を持つ。なぜ、女性は一緒ではなかったのか。捜査を進めるうち、違和感はますます募るが…。  一方、遺体で見つかった男性―佐山は、汚職事件が摘発の進行中だったある省の課長補佐だった。その線で捜査をしていた警視庁捜査二課の三原警部補が、福岡署を訪れる。三原は、鳥飼の話に興味を持ち、あらためて事件を捜査していく。その中で、男女が特急を乗るのを見ていた目撃情報に、作為的なものがあったのではないかと考えるが、疑惑をもった男のアリバイは完璧なようだった。さらに、事件に関与しているという思いは強くなるが、どう関与しているかもなかなか見えてこず、三原の捜査は難航していく。 ―――  平野謙氏による解説によれば、本作は「推理小説としては松本清張の処女長編」(228頁)とのことです。また平野氏の解説には、肝心のネタはさすがに割らないものの、やや詳しく説明があるため本作未読の場合は注意が必要ですが、クロフツなどアリバイもののミステリの系譜の中に、本作の意義を位置付けていて、興味深いです。  さて、私は横溝正史作品からミステリに興味を持ち、その後、当時活況を呈していたいわゆる「新本格」(つまり、いわゆる「社会派推理小説」へのアンチテーゼ)を中心に読む、といったあたりから読書を始めているので、本書をはじめとする社会派推理小説はあまり読んできていませんでした。とはいえ、本作はとても面白かったですし、以前紹介した​『砂の器』​も面白かったので、食わず嫌いはもったいないと再認識した次第です。時間は有限なので、なにもかも読むのは難しいですが、これからもいろいろ読んでいきたいとあらためて思った次第でした。  意味不明な感想になってしまいましたが、あらためて、今回読めて良かったです。  良い読書体験でした。(2024.01.30読了)​・ま行の作家一覧へ

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