碧野圭『菜の花食堂のささやかな事件簿』
~だいわ文庫、2016年~
菜の花食堂の店主で、料理教室も開催している下河辺靖子先生と、ある出来事がきっかけで先生の助手をつとめることになった館林優希さんが活躍するシリーズの第1弾。
料理教室の生徒さんたちが抱える悩みなどを解決する、「日常の謎」系のミステリです。
それでは、簡単に内容紹介と感想を。
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「はちみつはささやく」家庭的な料理を食べたいという彼氏の言葉をきっかけに料理教室に通うようになった香奈さんが突然欠席し始めます。一方優希さんは、香奈さんの彼氏が、女性と食事をしているところを目撃。その後「菜の花食堂」を訪れた香奈さんは、彼氏に料理を振舞ってから様子が変わってしまったと言いますが…。
「茄子は覚えている」唯一の男性の生徒、寺島さんと直売所でばったり出会った優希さん。苦手だったけれど、妻が作ってくれた茄子の揚げ浸しに感動したという彼の言葉に、次の教室のテーマは茄子に決定。けれど、どうしても思った味にならないようで…。
「ケーキに罪はない」優希さんが「菜の花食堂」に通い始るきっかけとなった、先輩の退職時のケーキをめぐる事件と、優希さんに悪意を抱く元同僚の物語。偶然再会してしまった元同僚は、優希さんから、話の流れから「菜の花食堂」のことを聞き出して…。
「小豆は知っている」料理教室一番のおしゃべり、村田さんがとつぜん教室を欠席。その後たまたま出会った村田さんは、顔にあざができていて…。
「ゴボウは主張する」子持ちの友人たちと教室に通いながら、しかしふとしたときに輪に入れない八木さん。ある日、いつものように友人たちの子供を公園で見守っていると、ふとした隙に子供の一人がいなくなっていて…。
「チョコレートの願い」靖子先生のもとに遠く離れた場所で暮らす娘から届いた荷物の意味とは…。
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冒頭2編は、少しすれ違いがありつつも、ほっとできるお話ですが、第3話・第5話はやりきれないものを感じるお話です。特に第5話は、ある人物たちに腹立たしくなりますが、しかしそこが突っ込まれないというもどかしさを感じてしまいました(私の心が狭いのか)。
料理教室の定番メンバーが力を合わせていく最終話では、前向きな気持ちにもなれます。
第二作以降も読んでいこうと思います。
(2024.11.21読了)
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