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2025.05.24
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ミシェル・ドヴェーズ(猪俣禮二訳)『森林の歴史』
~白水社文庫クセジュ、1973年~
(
Michel Devèze, Histoire des Forêt, Paris, 1965
)

 ヨーロッパの森林の歴史を概観する1冊。
 著者のドヴェーズについては訳者あとがきなどでも特に触れられておらず詳細は不明ですが、本書は、最近紹介した
・ロベール・ドロール/フランソワ・ワルテール(桃木暁子/門脇仁訳)『環境の歴史―ヨーロッパ、原初から現代まで―』みすず書房、2007
・ロベール・ドロール(桐村泰次訳)『中世ヨーロッパ生活誌』論創社、2014
や、
・池上俊一『森と川―歴史を潤す自然の恵み―』刀水書房、2010
に引用されたり参考文献として掲げられたりされていて、西洋の森林の歴史を論じる上では基本的文献です。
 本書の構成は次のとおりです。

―――
序文(レイモン・ヴィネエ)

序論
第1章 初期の開墾が始まる前のヨーロッパの森林
第2章 ヨーロッパ文明のあけぼの期における森林と人間
第3章 ローマ帝国時代におけるヨーロッパの森林
第4章 中世におけるヨーロッパの森林
第5章 15世紀から18世紀までのヨーロッパの森林 森林の危機
第6章 フランス大革命および帝制時代におけるヨーロッパの森林
第7章 19世紀の林業革命
第8章 20世紀におけるヨーロッパの森林
第9章 ヨーロッパをのぞく世界の森林の歴史
結論

訳者あとがき
参考文献
―――

 序論では、世界の森林の分布状況と地域ごとの世界の森林面積に占める比率が提示されます。
 第1章から第8章まではヨーロッパにおける森林の歴史の概観で人が森林をいかに利用したか、また森林保全へ向かう過程や、人の森林への態度などが論じられます。
 第1章は新石器時代までの植生の概観。
 第2章はフランスの事例として、前3000年頃の移住者たちによる人口増で、「ほんとうの開墾がはじまった」(21)ことを指摘します。
 第3章では、ローマ帝国時代、人々が森林に付していたのは宗教的任務であり、これが最初の公権力の介入を誘発したとの指摘(23頁)が興味深いです。
 第4章、私が興味を持っている中世に関しては、修道院が森林の開墾に果たした役割の大きさについて、修道院の名称から森林との関りがうかがえる事例を列挙しているあたりがあらためて勉強になりました(38-39頁)。
 第5章では、16世紀にフランス森林の危機が訪れたものの、17世紀後半、ルイ14世の治世に権力を握ったコルベールが、「先見の明と意欲を欠く前任者たちが躊躇した凛凛の全般的改革という緊急かつ重大な任務をやりとげた」(62)として、その発案による大勅令について詳しく紹介します。この章では、ルイ12世の治世(1498-1515)はまだ森林の需給が保たれていた時期だとし、彼が「善良王」と言われた「理由の一つは、疑いもなくこれである」(56)との指摘が興味深いです。
 第6章から第8章の近現代では、戦争と森林の関わりや、森林保全に向けた動き、専門学校の創設などの議論が印象的でした。
 また、序論同様、特に第8章以下でも統計的データが提示されていて、原著刊行が60年前ですのでそのまま現在に通用するわけではありませんが、傾向などをつかむ意味では有用だと思われます。

(2025.03.14読了)

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Last updated  2025.05.24 13:38:29
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